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実現すれば世界初? 特急車両に水素エンジンを載せる? JR東海と組んだベンチャーに聞く杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/9 ページ)

JR東海が2023年12月、鉄道車両向け燃料電池の模擬走行試験を公開した。鉄道の脱炭素の多くが燃料電池方式で、水素エンジンは鉄道業界では初耳。JR東海は、この水素エンジンをi Laboと開発するという。i Laboとはどんな会社か、さらに水素エンジンの仕組みと可能性などを取材した。

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運送会社などから引き合いが多い

杉山: 試作車ができて、試運転もできて、構造変更申請で車検もパスした。あとは売り込み先ですね。営業の話です。

小松: 売り込み先というか、引き合いは多いです。トラックを何百台、何千台と持ってる会社さんが「ちょっと試しに1台」という話が多いですね。

杉山: 本格的に大量に導入してほしいところですが、運送会社としては1台でも入れて宣伝すれば、イメージアップもできますしね。

小松: もう1つの問題は水素ステーションがないことなんです。

杉山: 水素関連のモビリティって、結局、供給側の問題に突き当たりますね……。

小松: 水素ステーションが運送会社さんの配送ルートに入っていないといけません。そして水素ステーションがあっても、大型トラックが入れないとダメです。車高や車幅がダメで、中型トラックさえ入れないところも結構あるんですよ。そもそも乗用車が入れるところでさえ、動線が確保されていない場合もあります。

 また弊社が開発しているエンジンと同じエンジンを使っているかも重要です。先ほど言った通り、コンピュータ解析が大変なので、すぐに違うエンジンはできません。

杉山: なるほど。別のエンジンはイチからやり直しになってしまう。

小松: もう1つはドライバーの心理的な問題です。運送会社の経営者さんによると、「水素エンジンはドライバーが怖がる」そうなんです。怖くないんですよ。トヨタのMIRAIは市販されていますし。もちろん、いまは何かあった場合は全面的にバックアップしています。しかし今後、量産した時にどうするかというと、関係各社と話をして、保証体系を決めていかなければいけません。

杉山: そのためにも走行実績をつくらなくてはいけない、という段階なんですね。一番良いのは、エンジンのメーカーさんと提携することでしょうか。

小松: メーカーさんも大型車を考えているとは思うのですが、中古車をコンバージョンして水素対応しますよといっても、協力してくれないだろうと思っています。新車を売りたいわけですから。それと大型トラックは、外国のダイムラーとかボルボといったエンジンを搭載しているので、なおさら障壁が高いんです。ただ水素エンジンの良いところは、トラックだけではなくて、建設機械や発電機にも使われていることで、汎用性は高いんです。


小松久宣氏

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