優秀な女性が「管理職になりたがらない」 上司が着手すべき4ステップ(1/2 ページ)
近年、管理職を取り巻く環境はより厳しさを増しています。期待しているメンバーが管理職になるまでの道を上司はどのように整備し、サポートしていけばよいでしょうか。4つのステップに分けて解説します。
管理職になりたがらない人が増えているというニュースを、さまざまなところで耳にします。期待をかけているメンバーから「管理職にはなりたくない」と言われ、どう説得していいか分からない上司も多いようです。
確かに近年、管理職を取り巻く環境はより厳しさを増しています。ワークライフバランスを大事にする若手メンバーや、特にライフイベントを控えた女性メンバーなどには勧めづらく感じることもあるかもしれません。
しかし、人生100年時代の長いキャリアを歩む上で、管理職になることは経験しておいて損はない重要なイベントです。期待しているメンバーが管理職になるまでの道を上司はどのように整備し、サポートしていけばよいでしょうか。4つのステップに分けて解説します。
管理職になりたがらない女性部下 上司の対応4ステップ
筆者が所属するリクルートマネジメントソリューションズの調査では、もともと管理職になりたくなくても、その後昇格した人のうち半数以上は、ポジティブな受け止めに変化することが確認されています。管理職にはなりたくないと思っていたけれども、実際にやってみるとやりたくないという気持ちが弱まったり、管理職として今後も活躍していきたいという気持ちが芽生えたりする人もいます。
図中のオレンジ色の部分が、昇進前には管理職を務めることにネガティブだったが、昇進後にはポジティブに変化した人の割合(リクルートマネジメントソリューションズ「管理職意向の変化に関する実態調査」,2016)
管理職として活躍されている皆さんは、管理職であるがゆえの大変さを経験されたことがおありでしょう。しかしそれだけではなく、管理職ならではの仕事の醍醐(だいご)味ややりがいを感じる場面も多いのではないでしょうか。期待しているメンバーにもそうした貴重な経験を経て成長してほしいと考えるとき、上司が取るべき対応をフェーズごとに分けてお伝えします。
ステップ1:早いタイミングで具体的に期待を伝える
将来的に管理職への昇進を期待しているメンバーには、まずはできるだけ早くそのことを伝えましょう。特に管理職になることに前向きでないメンバーは、急に昇進を打診されても受け入れることが難しかったり、反発を示したりすることが予想されます。
管理職への昇進が視野に入る30代前後は、男女を問わず、結婚や出産、育児などの大きなライフイベントが増えやすい年齢です。人によっては、介護や大学院進学を通じての学び直しなどを予定している場合もあります。働き方やキャリアの選択が多様化する中で、メンバーのライフプランとキャリアプランを丁寧に統合していくことが必要です。
近年、多くの企業がマネジャー・メンバー間で実施する定期的なキャリア面談を導入しています。そのような機会を使って、少なくとも年に1度はメンバーと中長期のライフとキャリアについて会話してください。管理職になることに前向きでないメンバーには特に、仮に管理職になるとしたらいつ頃で、どのような形が望ましいのかを、想定昇格時期の数年前から、可能性の一つとして本人に考えてもらうようにしましょう。
もちろん、本人の希望が必ず通るわけではなく、また会社側の都合だけで説得するのも難しいものです。そういう意味でも、結論を急がず、粘り強くすり合わせる姿勢を持つことが大切です。
また、期待を伝える際には、単に「管理職としてこれを担ってほしい」ということだけでなく、その人ならではの強みや魅力、それをどう生かしてほしいかを具体的に伝えます。
管理職になりたくないという人の中には「自分に務まるとは思えない」「自分には向いていない」と言う人もいます。その理由を確認し、不安や懸念の解消をサポートしてください。
例えば「メンバーを育てることに興味がないから管理職には向いていない」という人がいたとします。しかし今、多くの企業で、メンバーを育てることは管理職だけの仕事ではなくなりつつあります。
たとえ管理職にならず専門職としてのキャリアを選んだとしても、その道において後進を指導したりチームを率いたりすることはいずれ求められます。関心がなくても、そのような能力やスキルをある程度身につけておくことは、キャリアの選択肢を狭めないためにも重要です。
ステップ2:越境を経験させリーダーシップスタイルを探る
管理職になる前にぜひともやっておくべきことは、自分自身をよく知ること、自分らしいリーダーシップスタイルを探索することです。前述のように「自分には務まらない」「向いていない」と感じている管理職候補者には特に重要なステップになります。
「務まらない」「向いていない」理由として「自分は人をリードするようなタイプではない」ことを挙げる人がいます。しかし近年「サーバントリーダーシップ」や「オーセンティックリーダーシップ」など、必ずしも強い統率力でリードするだけではない、自然体でしなやかなリーダーシップが注目されています。
さまざまな形のリーダーシップの発揮の仕方があることを知り、自分はどのようなリーダーでありたいかを考える機会は、管理職になる前、できれば直前ではなく1〜2年前までに経験しておきたいものです。
本人のリーダーシップスタイル探索のために、上司としてできることは、本人が普段の仕事や慣れ親しんだ環境を一時的に離れて、普段と異なる環境で活動してみる機会を作ることです。
社外の異業種交流型研修への派遣やプロボノ活動への参加、副業、社内の公募型プロジェクト・組織横断プロジェクトへの参加や、比較的短期の兼務・出向などが考えられます。
多くの場合、1つの組織やチームに所属してしばらく過ごしていると、その組織の中で本人が果たす役割や周囲との関係性は固定されていきます。例えば現在の職場で長く働き、多くの後輩を抱えているような場合には、自分の意見が通りやすく、勝手も分かっていてやりやすいといった具合です。
しかし、ひとたび普段の組織や環境の外に出てみると、タイプの違う人との協働に苦労したり、普段よりも聞き役に回ることが増えたりと、自分自身の意外な一面に気付くことになります。また、普段と異なることに取り組むからこそ、自分らしさや自分自身の根本的な価値観に気付かされることもあります。
このようないわゆる「越境」経験からの気付きは、管理職・リーダーとしての自分自身をイメージする上で重要な材料になります。
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