キャンピングカー人気は続くのか 需要維持に必要な要素とは?:高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)
日本のアウトドアブームが落ち着いてきた一方、キャンピングカーの人気は衰えていない。展示会では大型車両をベースにした展示車が増え、熟年オートキャンパーの心をつかんでいる。しかし、ブームによるマナー低下に歯止めをかけないと、衰退につながりかねない。
震災によって存在意義が高まった面も
今年の元日に発生した能登半島地震によって、多くの被災者が自宅や家族を失い、避難所での生活を余儀なくされている。そういったところにキャンピングカーを派遣する動きもあった。これにより、非常時のキャンピングカーの有益性を伝えられたのは、今後のキャンピングカー業界にはプラスに働きそうだ。
今後自治体は、公営のキャンプ場にバンガローだけでなく、キャンピングトレーラーやキャンピングカーを設置して、万が一の災害に備えることも増えるのではないだろうか。それができれば、断水した後に2週間も風呂に入れないという事態は避けられるはずだ。
またキャンピングカーオーナーは一般の乗用車よりも高齢化が顕著であるから、今後ペダルの踏み間違いや、運転中の体調急変による交通事故なども増えていく可能性もある。したがって、キャンピングカービルダーは自動車メーカーと協力して、安全運転支援システム(レーンキープアシスト、衝突被害軽減ブレーキなど)やドライバー異常時対応システム(体調急変時の自動停車および救援要請)の導入を積極的に進めるべきだろう。
ドアtoドアで観光地を巡ることができるという点では、キャンピングカーは高齢者にとって便利なモビリティと言うこともできる。しかし移動が楽だから体力が衰えても旅行できる、という考えは危険だ。
クルマの運転には一定以上の運動機能や認知能力が必要なことは言うまでもない。それなのに、運転免許を取得しているだけで運転する権利があると思い込み、運転能力が低下しているにもかかわらず免許返納を拒否したり、運転能力を維持するための努力を怠ったりする高齢者があまりにも多い。
こうしたキャンピングカーオーナーの運転能力維持に対する意識も変えていく必要がある。キャンピングカー業界は、売るだけでなく、ユーザーの高齢化に伴う配慮や意識改革を働きかけていけば、長く健康的に車中泊による旅を楽しむドライバーを確保することになるはずだ。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
関連記事
- スポーツカーはいつまで作り続けられるのか マツダ・ロードスターに見る作り手の矜持
スポーツカーが生き残るのが難しい時代になった。クルマの楽しみ方の多様化や、規制の厳格化が背景にある。一方、マツダ・ロードスターの大幅改良では、規制対応だけでなく、ファンを納得させる改善を実施。多様化が進む中でビジネスもますます複雑になるだろう。 - 「東京オートサロン」はどこまで成長するのか クルマ好きをひき付ける魅力がある
今年も年明けに東京オートサロンが開催された。カスタムカーの祭典だが、自動車メーカーも積極的に出展し、クルマ好きの心をつかんでいる。環境に配慮した次世代モビリティの提案も増えた。自動車産業を支える一大イベントとして、どこまで成長できるのか。 - 高速道路SAPAの「有料化」案 しわ寄せで何が起こるのか
高速道路のサービスエリアとパーキングエリアについて、混雑緩和を目的とした有料化の検討について報じられた。しかし、有料化にはデメリットも多い。駐車スペース拡充や通行料金の見直し、トラックドライバーの地位向上などについても考える必要があるだろう。 - 「クルマのボディサイズ」が大きくなっている、これだけの理由
「クルマの大きくなっているなあ」と感じる人も多いのでは。駐車場は狭いままなのに、なぜ大きくなっているのか。背景を探っていくと……。 - 日本のキャンピングカー文化は定着するのか
キャンピングカー市場が伸びている。街中でもよく見かけるようになったが、なぜ購入する人が増えたのだろうか。今後の行方は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.