学費を「全額」サポート メルカリが従業員の「大学院進学」にこだわる理由(2/3 ページ)
メルカリは従業員の「大学院進学」を支援している。2022年から社会人博士支援制度「mercari R4D PhD Support Program」を導入している。
なぜ「大学院進学」を全面支援?
mercari R4D PhD Support Programもその中の取り組みの一つだ。同制度では、博士課程への進学を希望するメルカリ社員を対象に、学費や研究時間の確保を支援している。
同制度も研究領域は不問だ。同制度では選考を行い支援者を決めるが、研究テーマがメルカリのミッションに貢献しているか、学術的にインパクトのある研究なのかという2点を重視しているという。
研究に割く時間を確保するため、勤務時間は「100%、80%、60%、休業」の4種類から選択が可能。各従業員の状況に応じて研究と業務のバランスをデザインできるようにしている。
さらに、R4Dが研究テーマの相談にのるなど支援を強化する。R4Dが持つ大学院・研究室とのコミュニティーや研究テーマに対する知見を生かし、大学院進学を検討する従業員にテーマに合った研究室を一緒に探したり、紹介したりする。
「制度に応募してくる従業員は、既に教授と研究テーマについてすり合わせをしてる方、研究室や大学を探している状態の方などさまざまです。R4Dで『このテーマだったらこういう大学も選択肢になるかもしれないね』とアドバイスしたり、業務で出てきた問いについて『これって研究になりますかね?』という相談をされたりすることもあります」
メルカリが従業員の「大学院進学」を支援する背景に、日本におけるPh.D.(博士号)ホルダーの活躍の場を増やしたいという考えがあるという。
「日本では現状、産学での人材流動の硬直化が起きており、イノベーションが起こりにくい社会構造になっているのではないかと危惧しています。社会人Ph.Dホルダーの活躍の場を増やすことがイノベーション、エコシステムの活性化につながると考えています。
Ph.D.ホルダーには研究以外の場での活躍の可能性があるのではないかと仮説を持っており、本制度を通じて実際に検証し、発信していきたいです」
もちろん、企業活動へのメリットもある。井上さんは3つのメリットを挙げる。
「1つは、R4Dでは想定しなかったような研究テーマに出会えるんじゃないかという期待があります。この制度でそういった研究の種まきができると考えています。
2つ目はネットワークの構築。この支援の利用者を通じていろんな大学、研究室、教授とつながれることは、R4Dにとって大きなチャンスだと捉えています。
最後は人材育成です。博士での経験は、研究だけではなくさまざまな場で生きると考えています」
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