学費を「全額」サポート メルカリが従業員の「大学院進学」にこだわる理由(1/3 ページ)
メルカリは従業員の「大学院進学」を支援している。2022年から社会人博士支援制度「mercari R4D PhD Support Program」を導入している。
メルカリは従業員の「大学院進学」を支援している。2022年から社会人博士支援制度「mercari R4D PhD Support Program」を導入した。同制度では大学院進学・在学に掛かる学費を全額支給。さらに、研究と業務の両立ができるよう、時短や休職など柔軟な働き方を選べるようにした。
メルカリの博士支援制度の強みはこれだけではない。同社独自の研究開発組織「mercari R4D」が研究テーマの設定や大学院・研究室の選定などを広く支援することで、より有益な研究に励むことができるという。
社会人博士支援制度を利用する人は、どんな研究をしているのか。業務と研究のバランスはどうとっているのか。mercari R4D マネジャーの井上眞梨さんに社会人博士支援制度の利用実態と、制度を支えるmercari R4Dについて話を聞いた。
「mercari R4D」の正体
社会人博士支援制度を提供・運営するのは、メルカリの研究開発組織 「mercari R4D」(以下、R4D)だ。制度の紹介の前に、まずはR4Dとは一体どんな組織なのか、その正体について説明する。
R4Dは、研究(Research)と4つのD、設計(Design)・開発(Development)・実装(Deployment)・破壊(Disruption)を意味する。「Pioneering the path toward undiscovered value(まだ見ぬ価値を切り拓く)」をミッションに「限りある資源を循環させ、あらゆる人が可能性を発揮できる未来」を目指し、研究活動に励んでいる。
一般的な事業会社のR&D(研究開発)は、製品の開発や既存のプロダクトの改良など、既存ビジネスと関係する研究に取り組むことが多い。対してR4Dは同社ビジネスと地続きではない研究も許容していることが大きな特徴だ。
実際の研究領域も「量子情報技術」「ELSI(社会的課題)」「AIによる市場の最適化」「循環型社会に向けたサービスデザイン」など、バラエティーに富んでいる。
「自社の事業に限らず幅広い研究を進めています。AIやIT系だけじゃなく、社会的課題(ELSI)やコミュニケーションの研究など、文系的な研究もスコープに入れています」(井上さん)
また、産学で人材交流できる仕組み作りにも取り組む。産官学、アカデミア、国などの枠を超えて、R4Dがハブとなりさまざまなコミュニティーを形成することを重視し、大学との人材交流などを進める。
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