卵を使わずマヨネーズを再現 キユーピーがこだわった「本物の味」の正体(2/3 ページ)
キユーピーがプラントベース(植物由来)フード事業に力を入れている。プラントベースフードを展開する新ブランド「GREEN KEWPIE」のプロジェクトリーダー・綿貫智香氏に話を聞いた。
あえて調味料から着手したワケ
GREEN KEWPIEにおける市販用商品のラインアップは、「植物生まれのごまドレッシング」「植物生まれのシーザーサラダドレッシング」(いずれも同319円)、「植物生まれのマヨネーズタイプ」(同324円)といった、調味料が中心だ。マヨネーズやドレッシングが同社の中核事業であることも関係しているが、綿貫氏によれば他にも理由があるという。
「GREEN KEWPIEを立ち上げた当時、肉や魚をプラントベースフードで再現した商品はすでに複数ありました。ですが、調味料の分野ではあまり先例がなく、弊社の事業領域とも相性が良かったのです」(綿貫氏)
「思い出の味」をどう再現するか
プラントベースフードの開発時における課題の1つに、「本物の味」にどこまで近づけられるかということが挙げられる。プラントベースフードでできたマヨネーズやドレッシングを消費者が食べた時に、過去に食べた通常のマヨネーズやドレッシングの「あの味」がしなければ、同じものであると認識されないのだ。「私たち一人一人の中には『この食べ物はあの味がする』という記憶があります。その記憶の中にある『あの味』を再現しなければならなかったのです」と綿貫氏は振り返る。
「食べ物を化学分析して、その成分結果に近付ければいいのでは?」と考える人もいるだろう。しかし、動物性のものを化学分析して「あの味の正体はこれだ!」と割り出したところで、再現するのに使用できるのは植物性のものだけ。つまり、全く違う成分で「あの味」を組み立てる必要があるのだ。
また、味の面だけでなく動物性食品には「コク」や「濃厚感」を出す機能がある。植物性食品だけでは、全体的に「あっさり」した味になってしまうという難点もあった。「あの味」のイメージに近付けるため、ひたすら試作を繰り返したという。
「あの味」の再現に際し、綿貫氏は印象的なエピソードがあるという。「弊社には『おいしさ』を研究するチームがあり、そこで味覚評価や香りの分析を化学的に行っています。その研究チームのリーダーに『通常の商品とプラントベースフードは全く成分が違うのに、なぜ同じ味、同じものだと認識するのだろう』と尋ねたところ、『思い出の味を食べているからだ』という答えが返ってきました」
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