連載
アップルはなぜ「自動運転EV」の開発を終了したのか 考えられる理由は3つある:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
アップルが自動運転EVの開発を終了したという。かつてダイソンやグーグルもEVの自社開発を断念している。高い商品性を備えたEVの開発が難しいことに加え、自動運転は求められる技術力もリスクも非常に高い。また今後は、安全性だけでなく新たな価値提供も必要だ。
途方もない時間とコストがかかる
繰り返すが、EVを作るのはハードルが低いという見方をする報道もあるが、それは入り口レベルの話だ。しかも自動運転となると、まったく話は別だ。そもそも自動運転と相性がいいことでEVをベースにする前提となっているが、自動運転とEVでは求められる技術レベルがまるで違う。
自動運転の実現には、途方もない時間とコストがかかる。テスラはその開発の一端をユーザーに託すことで効率よく開発スピードを高める戦略を採ったが、いまだに完全自動運転は実現していない。
グーグルが撤退したのは、「自社でハードウェアとソフトウェアを用意するのはリスクが高すぎる」ということが大きい。低速で走る自動運転車の実現には見通しがついても、それがコストに見合う価格で販売され、ユーザーに受け入れられるとは限らない。ダイソンが撤退したのも、全く同じ理由なのだ。
アップルはパーソナルなモビリティとしてプレミアム性を高めたものを提供しようとしていたのだろうが、自動運転の実現にはまだ膨大な時間がかかると判断して、一時撤退を決めた。これが2つ目の理由だ。
関連記事
- ハイブリッドが当面の“現実解”である理由 勝者はトヨタだけではない
EVシフトに急ブレーキがかかっている。CO2排出や電力消費の面で現実が見えてきたからだ。現時点ではハイブリッド車、そのなかでもエンジンで発電してモーター走行するシリーズハイブリッドが最も現実的な方式だ。その理由とは…… - マツダの「MX-30 ロータリーEV」 現時点で“EVの最適解”と言えるワケ
マツダがロータリーエンジンを復活させたことで注目される「MX-30 ロータリーEV」。ロータリーエンジンを発電に使うこのクルマは、MX-30のEVモデルとは別物の乗り味だが、日常で使いやすい仕様になっている。今後のEV普及に向けて、現時点で「最適解」と言えそうだ。 - スポーツカーはいつまで作り続けられるのか マツダ・ロードスターに見る作り手の矜持
スポーツカーが生き残るのが難しい時代になった。クルマの楽しみ方の多様化や、規制の厳格化が背景にある。一方、マツダ・ロードスターの大幅改良では、規制対応だけでなく、ファンを納得させる改善を実施。多様化が進む中でビジネスもますます複雑になるだろう。 - 「東京オートサロン」はどこまで成長するのか クルマ好きをひき付ける魅力がある
今年も年明けに東京オートサロンが開催された。カスタムカーの祭典だが、自動車メーカーも積極的に出展し、クルマ好きの心をつかんでいる。環境に配慮した次世代モビリティの提案も増えた。自動車産業を支える一大イベントとして、どこまで成長できるのか。 - キャンピングカー人気は続くのか 需要維持に必要な要素とは?
日本のアウトドアブームが落ち着いてきた一方、キャンピングカーの人気は衰えていない。展示会では大型車両をベースにした展示車が増え、熟年オートキャンパーの心をつかんでいる。しかし、ブームによるマナー低下に歯止めをかけないと、衰退につながりかねない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.