20万台を突破した「ミライスピーカー」が米国に “無名の商品”をどうやって売るのか:テレビの音が聞こえやすくなる(2/5 ページ)
累計販売数が20万台を超えた「ミライスピーカー」シリーズ。テレビの音を聞こえやすくする機能に特化したスピーカーで、特許技術の「曲面サウンド」が使われている。2023年11月に米国に本格進出したというが、ニッチなカテゴリーでどう市場を切り開いていくのか。
国内市場は、2つの新製品で展開
ミライスピーカーの核となるのは、「曲面サウンド」と呼ばれるサウンドファンの特許技術だ。振動板が円すい形である一般的なスピーカーに対し、ミライスピーカーの振動板は平板を湾曲させた形状となる。これがテレビの音、特に人の声を聞きやすくするのに効果を発揮するという。
同社は、創業以降しばらくB2Bで事業を展開していたが、20年5月に初の家庭用製品として「ミライスピーカー・ホーム」(メーカー希望小売価格2万9700円、以下:ホーム)を発売。聴力が衰えた高齢者をメインターゲットにし、販売数を伸ばしてきた。
23年10月には、曲面サウンドのユニットを左右に1つずつ搭載することでステレオサウンドを実現した「ミライスピーカー・ステレオ」(以下:ステレオ)を、24年2月にはシリーズ最安値の「ミライスピーカー・ミニ」(以下:ミニ)をそれぞれ発売。ミニはホームの後継機であり、音を聞こえやすくする機能性はそのままに、2万円以下の価格を実現した。
これらの新製品は、顧客の声から生まれている。初代のホームは人の声は聞きやすいが、ドラマや映画のBGMなど背景音の聞こえ方に物足りなさを感じる人がいた。そういった音を楽しみたいニーズに応え、声が聞こえやすく、かつステレオサウンドで音の臨場感を引き出すモデルとして「ステレオ」を開発したという。
さらに、価格の引き下げを望む声を受け、部品点数を減らしたり、工場を変えたりして、機能性を維持したまま価格を引き下げた「ミニ」も開発。ホームは高齢の両親へのプレゼントとして購入されることが多く、「3万円は高い」という意見が一定数あったという。
新製品の発売に合わせて、これまで白だった振動板を「黒」に変更した。既存の黒い振動板では思ったような音質にならず、ホームで使っていた白い振動板を黒い塗料で塗ることにしたが、その調整はかなり難航したとか。「技術担当者に強く依頼して、黒い振動板を実現してもらった」(金子氏)そうだ。
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