事故21%減 あいおいニッセイ「安全運転」をサポートするアプリ、提供の狙いは?:前編(3/3 ページ)
あいおいニッセイ同和損害保険は1月、これまで自動車保険などの契約者向けに提供していた4つのアプリを統合した。これは「安全運転」をサポートするアプリで、閲覧者は事故頻度が21%低い。
マーケティングへの活用も
このようにしてアプリの統合は完了したが、今後はどんな進化を目指していくのか。同社では、アプリにとどまらずWebサイトも含めて、行動データを収集し、顧客一人一人を理解し、分析することを進めようとしている。
「平時の顧客接点はこれまでオフライン中心だったが、今はデジタルが中心になっている。時系列にお客の行動を捉えて、行動ログデータなども取り、情報に基づいてパーソナライズした提案を行えるようにしたい」と安仲氏は将来像を語る。
表側のアプリ開発と並行して、裏側では顧客データプラットフォームの基盤開発も進めており、ありとあらゆる顧客データを統合して、分析できる準備を進めている。基幹システム以外で、横断プロジェクトとして情報集約する仕組み作りに取り組むのは同社初だという。
例えば、顧客が解約ページを閲覧しているようなら、現在の契約に不満を持っている可能性があるということで、リアルでの接点強化に動く。逆にテレマ保険や安全運転についての記事を頻繁に閲覧しているなら、新規契約に関心があると見込み営業活動につなげていく、といった具合だ。さらに自然災害情報などもプッシュ通知することなどで興味関心について把握分析し、商品開発につなげていくという。
長らくオフラインの対面手法で顧客との接点を築いてきた同社にとって、アプリの統合はDXの象徴でもある。保険会社にとって、顧客と実際に触れ合う接点を持っているのは保険代理店の人たちだ。ところが、アプリやWebサイトを活用することで、保険会社自体が顧客一人一人の情報を把握できるようになる。
これは昨今、どんな会社も狙っているところではあるが「当社にはテレマ保険という接触頻度の高いサービスがある。これを活用すればより多くの顧客接点が取れるのではないか」と安仲氏は期待する。アプリの統合という、一見地味な取り組みは、実は顧客データの取得から活用まで、全社横断で取り組むという壮大なDXプロジェクトの氷山の一角だったわけだ。
後編では、そもそもなぜ同社が安全運転の啓もうを強化しているのか。テレマティクス保険を軸に置いた経営戦略について深堀りする。
※取材対応者の部署名・肩書は取材当時のもの
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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