「アジアでBEV出遅れ」は好機になる? 日本車が再び選ばれるようになる理由:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
タイの日本車ディーラーが中国や韓国のブランドに乗り換える動きが続出しているようだ。しかし、勢いのあるアジア勢と比べて、慎重なのが日本車メーカーの成功の理由とも言える。性能や使い勝手で再び日本車が選ばれるようになる可能性も大いにあるだろう。
「日本式」を欧州の技術コンサルも評価
日本のやり方の正しさは欧州のエンジニアリング会社も予測していた。
23年暮れに早稲田大学で開催されたシンポジウムを拝聴した。それはオーストリアのエンジニアリング・コンサル企業AVLと早稲田大学の合同によるシンポジウムで、テーマは「自動車用パワートレイン開発プロセス及び開発手法」。ちなみにAVLは世界中のほとんどの自動車メーカーに技術提供やアドバイスを行っており、F1マシンからBEVまでほとんどのクルマに関する技術を有している。
シンポジウムでは、主要各国のカーボンニュートラル目標から現状の内燃機とEVの種類、さらに低炭素である自動車生産の手段など、段階的にクルマの電動化やカーボンニュートラルに対する解説が進められていった。
その後BEVのシェアの推移や現状の課題、AVLが持つ課題解決の技術、今後の目標など、現時点での状況を解説していった。
そしてすでに中国でも23年10月には前年同期と比べBEVの販売が減少し、PHEV(プラグインハイブリッド車)が増えているという。そうしたデータを踏まえて、世界各国での電動車や水素利用によるカーボンニュートラルへの取り組みに対しても、日本だけがデータや理論に裏打ちされた戦略が出来ていると評価していた。
早稲田大学とAVLが開催した合同シンポジウムで使われた資料の一部。各国の動力別生産台数の予測を2021〜23年で比較したもの。最新の予測では欧州も中国もBEVの普及速度を低下させていることだろう(出展:AVLジャパン)
驚いたのは、そのデータの妥当性もさることながら、トヨタが提唱しているHEV(ハイブリッド車)主力の電動化戦略を高く評価していることだった。2050年までのクルマのCO2排出低減へのシナリオ予測でも、欧州に対して日本の方が数値は良好であった。
「日本はうまくやっている」とまで評価してくれた登壇者もいたほどだ。この内容を欧州や中国で語ったら、どういう反応を示すだろうか。そう思わせるほど、日本の自動車メーカーの姿勢を評価してくれたのだ。
関連記事
- ハイブリッドが当面の“現実解”である理由 勝者はトヨタだけではない
EVシフトに急ブレーキがかかっている。CO2排出や電力消費の面で現実が見えてきたからだ。現時点ではハイブリッド車、そのなかでもエンジンで発電してモーター走行するシリーズハイブリッドが最も現実的な方式だ。その理由とは…… - アップルはなぜ「自動運転EV」の開発を終了したのか 考えられる理由は3つある
アップルが自動運転EVの開発を終了したという。かつてダイソンやグーグルもEVの自社開発を断念している。高い商品性を備えたEVの開発が難しいことに加え、自動運転は求められる技術力もリスクも非常に高い。また今後は、安全性だけでなく新たな価値提供も必要だ。 - マツダの「MX-30 ロータリーEV」 現時点で“EVの最適解”と言えるワケ
マツダがロータリーエンジンを復活させたことで注目される「MX-30 ロータリーEV」。ロータリーエンジンを発電に使うこのクルマは、MX-30のEVモデルとは別物の乗り味だが、日常で使いやすい仕様になっている。今後のEV普及に向けて、現時点で「最適解」と言えそうだ。 - スポーツカーはいつまで作り続けられるのか マツダ・ロードスターに見る作り手の矜持
スポーツカーが生き残るのが難しい時代になった。クルマの楽しみ方の多様化や、規制の厳格化が背景にある。一方、マツダ・ロードスターの大幅改良では、規制対応だけでなく、ファンを納得させる改善を実施。多様化が進む中でビジネスもますます複雑になるだろう。 - キャンピングカー人気は続くのか 需要維持に必要な要素とは?
日本のアウトドアブームが落ち着いてきた一方、キャンピングカーの人気は衰えていない。展示会では大型車両をベースにした展示車が増え、熟年オートキャンパーの心をつかんでいる。しかし、ブームによるマナー低下に歯止めをかけないと、衰退につながりかねない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.