中国系企業が日本の“再エネビジネス”に食い込む 「透かし騒動」から見る実態:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
政府の再生可能エネルギー関係の会議資料に、中国企業のロゴマークの透かしが入っていたことで騒ぎとなった。これはミスだったようだが、中国系の企業が日本の太陽光発電事業に入り込んでいることは事実。FIT制度を利用して多額の収入を得ることが狙いだ。
事業推進だけでなく、対策も徹底すべきだ
日本政府は、エネルギー政策の基本的な方向性として「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量をゼロにすること)」を宣言し、環境対策が「社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるものです」と説明している。
再生可能エネルギーを推進すれば、日本企業にもビジネスチャンスが広がる。太陽光エネルギーもその一つであるが、その機会を外国勢に奪われてしまえば本末転倒である。しかも、それが安全保障にも関わると指摘されているのであれば、なおさら対策は必要だろう。
日本政府は22年4月から、FIT制度に加えて、FIP制度を導入している。これは発電事業者が、市場などに電気を売ることでプレミアム(補助金)を上乗せして受け取れるもので、FITの固定額での買い取りとはまた別の制度になる。どちらも再生エネルギーの普及という目的は同じである。
筆者は、自然に配慮するために日本政府が進めている事業を、頭ごなしに批判するつもりはないし、中国企業を目の敵にして区別するつもりもない。ただ、重要インフラである発電施設の管理は、国民の生命財産を守るために、日本政府がきちんと取り組むべきだと思っている。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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