社員が「記名式」で社長に意見 「三行提報」はなぜ99%の提出率を誇るのか:AIを使った分析も(2/4 ページ)
サトーホールディングスは従業員が記名式で、社長や経営層に提案・報告をする制度「三行提報」を45年以上続けている。驚くべきは、毎日の提出が求められるにもかかわらず、提出率が99%を超えている点だ。なぜ、そこまで高い提出率を維持できるのか。
「毎日」なのに、提出率99%の秘訣
毎日提出となると、つい忘れてしまったり、サボりがちになったりしてしまう社員もいそうだ。「提出率99%」を誇る秘訣は何なのか。
それは「三行提報を経営に参加できる権利と位置付けていること」と「提報の獲得ポイントが評価や賞与、昇給にひも付けられていること」の2点にある。
創業者の代の三行提報はトップダウンで、提出を強制する傾向にあったという。当時の提出率は70%程だった。
しかし、2代目社長が「経営者に提案をする権利、物事を言う権利がある。ぜひその権利を使ってほしい。みなさん書いてくれてありがとう」と、取り組むスタンスを変えた。加えて、インセンティブとして、提報の提出が金銭的な対価に直結するポイント制度も整えた。提報を提出するだけでもポイントが付与され、さらに会社の改善につながる提案をすれば高く評価される仕組みである。
とはいえ「さすがに毎日だと、質の低い意見が集まることもあるのでは?」という疑問も浮かぶ。こうした対策としては、特定のテーマで意見を募る「テーマ提報」を募集するなどしてマンネリ化しないよう工夫する。また、日記的な内容や他者のコピーなどはNGと定めており、中身のない提報の提出はほぼないという。
だが、そもそも提報に質の高さは求めていないと渡辺氏。
「提報に質の高さを求めすぎると、継続が難しくなる。それよりもアイデアや気付き、小さなことにも問題意識をもって書いてくれることを期待している。この取り組みが長続きしている秘訣はファジーであることだ」
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