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『キャプテン翼』が連載終了 その功績と“機会損失”を振り返るエンタメ×ビジネスを科学する(2/5 ページ)

『キャプテン翼』は4月の雑誌掲載にて漫画連載を終了し、今後はネーム形式で公式webサイトなどに掲載すると発表した。改めて同作の功績と、ある「機会損失」について振り返りたい。

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「スポ根」からの脱却

 当時、スポーツ漫画と言えば努力や根性で苦しい練習に耐えることを前面に出した、いわゆる「スポ根」ものが主流であった。一方、『キャプテン翼』は練習も含めて純粋にサッカーを楽しむ様子を描き、当時の子どもたちにはサッカーという競技そのものが魅力的なものとして映った。複雑な背景や思想などは含めず、エンターテインメントに特化したことが成功要因と考えられる。

 これは前回のテーマである『ドラゴンボール』が人気になった要因とも共通する。集英社および少年ジャンプ編集部はDr.スランプ以降、それまで積極的ではなかったジャンルの漫画のアニメ化にも取り組み始めている。1983年に始まった『キャプテン翼』のアニメもその一つであり、結果として大ヒット作品となった。

 『キャプテン翼』は、単なるエンターテインメントとしての成功にとどまらず、日本のスポーツ文化に大きな影響を与えた。この作品は漫画とアニメを通じて、子どもたちにサッカーというスポーツの存在と、サッカーが楽しいことを認知・浸透させた。日本のサッカーが、マイナースポーツからメジャースポーツへと変わる土台を築いた存在の一つといえる。

 それを示す数字がJFA(日本サッカー協会)の第3種(中学年代)、第4種(12歳未満)の登録者数にある。1980年の約14万人から、1986年には約40万人へと急増しているのだ。


サッカーを楽しむ子どもたちが急増した(写真はイメージ)

 JFAの登録者のみでこの数であり、学校や公園でサッカーで遊ぶ子どもはこの数倍に上っただろう。当然、サッカー人口が増えた要因には協会や日本サッカーリーグ所属企業、各地で行われたサッカー教室の努力も含まれるが、全国で放送された『キャプテン翼』がマーケティングにおける認知・興味・関心に多大な影響を与えたことは疑う余地がない。事実、1990年代後半から2000年代に活躍した多くのプロサッカー選手が、幼少期に『キャプテン翼』を見てサッカーを始めたことやプレイスタイルを真似たことを語っている。

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