海賊版サイトに過去最大級の賠償額 それでもユーザーは「負荷」の低いものを選び続ける 出版社の解決策は?:エンタメ×ビジネスを科学する(3/5 ページ)
海賊版サイトの取り締まりは今もなおいたちごっこが続いている。こうした市場環境で、漫画家や出版社といったコンテンツホルダーはどのように作品を守り、収益を確保できるだろうか。
「負荷」が低いものが選ばれる
本屋やコンビニで漫画雑誌を手に取っていた時代からスマホアプリで読む人が増えたり、単行本は紙から電子書籍を購入する人が増えたりと、消費形態はより利便性が高い方法に移っていった。
ここで「利便性」という言葉に注目したい。そもそも利便性の高いコンテンツ提供とは何だろうか。本稿では「そのコンテンツを楽しむ時、消費者が感じる負荷が低い状態」と定義したい。
例えば下図の例のように、コンテンツ消費に必要となる要素を「場所」「動作」「情報提供」「所要時間」「価格帯」などに分解し、それぞれの軸でユーザー負荷を評価し、合算する考え方を想定する。
Netflixを例に取ると、場所の制限がなく・(レコメンドが優れていれば)閲覧という動作のみでよく・決済情報登録は初回のみで・所要時間は長いが・価格帯は安い、となる。当初の対抗コンテンツであった映画館での鑑賞やレンタルショップと比較すると場所指定・視聴・価格帯などで負荷が低く、また海賊版サイトと比較しても価格帯以外は大差がないといえる。
つまり海賊版サイトを閲覧する手間やリスクと、公式サービスを利用する価格の比較と考えることができる。これで価格の負荷がリスクの負荷を下回れば、海賊版サイトは使われなくなるといえる。
電子書籍でも同様のことがいえる。初回の各種情報提供さえ完了すれば、あとは海賊版サイトのリスクと価格の比較に落とし込むことができる。
先の訴訟の度重なる報道や、官公庁による啓蒙(けいもう)活動によって、海賊版サイトの使用がハイリスクであることが浸透すれば(違法のため当然ではあるのだが)、「金銭を支払う負荷」を「リスクを取る負荷」が上回り、結果として公式のチャネルが選ばれるようになるはずだ。
ただ、先行事例のNetflixを始めとしたオンラインストリーミングサービスにおいて昨今風向きが変わっている。海賊版サイトの利用が再び増え始めたとの調査結果が出たのだ。
原因として考えられるのが、ストリーミングサービスによる値上げと、強制的な広告視聴の導入・増加である。先の図にのっとると、価格帯が上がれば当然負荷は上がり、そして動画視聴に広告視聴が必須となれば更にユーザー負荷は増す。
ストリーミングサービスを利用する上での負荷が増大することで、海賊版サイトの方が低負荷と感じる層が増え始めたとも考えられる。特に価格については、例えば同じ1000円であっても値下げした1000円と値上げした1000円では負荷の感じ方が異なるため、コントロールが難しい要素でもある。
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