海賊版サイトに過去最大級の賠償額 それでもユーザーは「負荷」の低いものを選び続ける 出版社の解決策は?:エンタメ×ビジネスを科学する(4/5 ページ)
海賊版サイトの取り締まりは今もなおいたちごっこが続いている。こうした市場環境で、漫画家や出版社といったコンテンツホルダーはどのように作品を守り、収益を確保できるだろうか。
出版社に出来ることは?
オンラインストリーミングサービスにおいては、事業者がサービス維持・収益拡大に向けて行った値上げと広告導入が、ユーザー離れと海賊版サイトの利用を促進している可能性がある。
では電子漫画が同じ轍(てつ)を踏まないためには何が必要だろうか。価格だけ見れば、漫画の単行本は1990年代と比較して40〜50%程度値上がりしており、負荷の増大は免れない。提供側もそれを考慮し、また新たな顧客獲得・消費につなげるべく、下記のような「電子版ならでは」の取り組みを行っている。
- 自社漫画アプリでの1話売り(雑誌掲載時の1話単位で販売)
- 自社漫画アプリでの複数雑誌定期購読
- 電子書籍プラットフォームでのポイント増量キャンペーン
- 過去作品の再編集(ストーリー上の区切りで再構成)
- 過去作品のカラー版の作成・販売
特にポイント増量キャンペーンは近年の人気作品も含めて30〜50%分のポイントといった高還元率になることも多く、定期的にSNSなどでも話題に上っている。また現状の取り組みを見るに、(1)ライトユーザーへの低価格での提供、(2)雑誌派への複数雑誌定期購読の提供、(3)単行本派へのポイントキャンペーン・付加価値提供および買い直し需要の喚起、と一通りの施策は打っているように見える。
おそらく、ユーザー負荷を軽減させる方向の、短期的に可能な取り組みは一通りやりきっているのではないか。
長期の目線で考えると、日本の出版社横断での定期購読(web・アプリ)や、過去作品の提供プラットフォーム構築などが考えられる。もともと消費者目線では「本屋」という共通プラットフォームでそれぞれの嗜好に合う漫画を手に取っていたわけであり、出版社単位で(もしくは雑誌単位で)サービスが分かれていることは、それだけで負荷となる。
もっとも、消費者からするとすでに利用している電子書籍プラットフォームと並行する形になるためハレーションが生じる。ただ、海外プラットフォーマーに売り上げの相当分が流れている状況は改善するべきだ。
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