スーパー再編の大一番 首都圏を勝ち取るのはイオンか、セブンか それぞれの勝ち筋とは:小売・流通アナリストの視点(4/6 ページ)
上場している小売企業の決算期は2月が多いので、小売ウォッチャーにとって毎年4月は各社の決算発表を追いかける季節。今年はビッグネームの再編に関するニュースが飛び込んできて、個人的には興味津々の春となった。
スーパーの主戦場、首都圏の今後は?
スーパーの主戦場である首都圏の争奪戦は、これからさらに本格化するだろう。なぜなら、西友本体の争奪戦が始まるからである。
西友は長らく業績を開示せず、水面下で再建を進めているようなイメージだった。2023年2月期については、売り上げ6647億円、経常利益270億円(経常利益率4%)と報じられており、再建にメドがついたとしていた。西友の85%株主が不動産ファンドである以上、西友の分割または一括売却が始まるということを意味しており、その後、北海道、九州売却の報道に至る。ファンドにとって投資先の業績改善とは「売り時が来た」を意味するからだ。
会社は「これ以上の分割譲渡は考えていない」とコメントしていたが、これは現時点の話だろうし、分割せずに全部売却を否定してもいない。今残った西友の売上規模は約5400億円。その多くが3大都市圏にあり、中でも首都圏がかなりを占めている。この西友が誰につくかで、業界勢力図はかなり変動することになる。
「まいばすけっと」が画期的なワケ
首都圏の争奪戦において、USMHという1兆円スーパーが注目されるイオンだが、まいばすけっとを成立させたことこそ、業界史に残る実績かもしれない。ほぼ東京23区と京浜間にしかないコンビニサイズの店だが、スーパーとして必要最低限の商品を備え、価格も安いため徐々に浸透。今では1000店舗以上に拡大している。
まいばすけっとが一般的な食品スーパーと違うのは、商品を流通加工するバックヤードを持っていない点だ。商品はセンターで加工後に配送され、店舗は陳列するだけ、という仕組みで運営されている。そのため、まいばすけっとは少ない店舗人員での運営が可能となり、店舗当たりの売り上げは2.1億円なのに黒字、というローコストオペレーションを実現している。これは労働集約的な食品スーパーにとっては画期的なことであり、今後の首都圏争奪戦を勝ち抜くための重要なノウハウなのだ。
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