クルマの“顔つき”はどうやって決まる? デザインに表れる思惑とは:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
自動車のフロントマスクは各メーカーにとって重要な要素だ。ブランド戦略によってその方針は異なる。海外メーカーには、デザインの継承を重視しない姿勢も見られる。一方、国内メーカーも方針はさまざまで、デザインから各社の思惑も見えてくる。
日本の自動車メーカーも方針はさまざま
日本ではマツダがここ10年ほど、デザインモチーフの共通化を進めてきた。それまではミニバンやピックアップトラックなども販売してきたが、ハッチバックとセダン、SUVとスポーツカーだけにラインアップを絞り込み、それ以外はOEM(相手先ブランドによる生産)の体制を採っている。
マツダが「魂動デザイン」と呼ぶ、精悍(せいかん)さと日本らしさを感じられる凜とした趣、しなやかさも伝わってくるフォルムやディテールは国内外で人気を博している。
スバルもヘッドライトやフロントグリルでシリーズの統一感を生み出している。デザイン哲学もあり、現在は「BOLDER」と呼ぶソリッドでカタマリ感のあるエッジの効いたイメージを展開しており、メカニズム以外にもスバルファンを増やしているようだ。
トヨタは現在、販売チャネルごとの専売車種を撤廃し、全車種販売となった。そのため顔を変えただけの双子車や三つ子車は作りにくくなったことから、より1車種をじっくり作ることになる。
ところでトヨタはここ最近、「ハンマーヘッド」と呼ぶヘッドライトデザインを展開し、さまざまなカテゴリーで採用を増やしている。だが、これはマツダのように全てに浸透させるのではなく、ある程度の範囲の車格にとどめて採用している。
コンパクトカーから超高級車まで同じデザインモチーフを採用することは、デザインの陳腐化につながり、超高級車を台無しにし、コンパクトカーのコストを上昇させるだけだからだ。また人気車種も多いトヨタは、そのモデルごとにキャラクターが確立しており、そのキャラクターの継承もフロントマスクのデザインを多彩にしている。
一方、高級ブランドのレクサスはスピンドルグリルを全車に採用し、アイデンティティーを明確に押し出している。
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