クリエイターやプランナーに伝えたい いいアイデアには「寄り道」が必要なこれだけの理由:令和の無駄学(2/2 ページ)
読者の皆さんは最近、寄り道していますか? 実は、寄り道はアイデアや企画を考える際に多くのメリットをもたらします。本記事では、寄り道の持つ可能性を考察してみましょう。
仕事前も、仕事中も……おすすめの寄り道
ここまで私流の寄り道について紹介しましたが、実は少し前の私にとっては寄り道するなんてことは、考えられないことでした。
というのも「寄り道といえば仕事後」という固定観念があり、忙しい毎日の中だとそんな時間は作れない、と思っていたのです。
しかし、ライフステージや仕事相手の変化などを通じて、「寄り道って、仕事後だけじゃなく、仕事前や仕事中にしてもいいんじゃないか」と考えるようになりました。そして、実践してみたら、仕事帰りよりも仕事前や仕事中のほうが、実は時間の調整がしやすいことに気が付きました。
仕事前であれば、実際には保育園への送りを終えて、職場についていてもおかしくない時間帯であっても、「保育園送り→会社へ移動」というようにスケジュールをブロックしています。そうすることで、急な打ち合わせなどが入ることがなくなり、落ち着いてアイデア・企画を考える時間を確保できます。
また、得意先に出向く際には、移動時間を30分見ておけば大丈夫なときでも、1時間分「移動」としてスケジュールをブロックする。これだけで、現地で自身の思考を整理する時間を持てているのです。
また同業の知人の話を聞いてみると、泊まり出張の時に、可能な限り「サウナ」に寄り道しているとのこと。目的地からは少し遠いけど、サウナのついているホテルに泊まったり、有名なサウナ施設が近くにあるホテルをわざわざ選んだりしているそうです。彼の場合は、出張が決まった段階から、計画的に寄り道する場所を探しています。
彼がサウナに行く理由は、スマートフォンから強制的に離れる時間を作れること。そうすると、自分の頭の中と向き合うか、周囲の人たちを見るしかなくなり、自然と直近で考えが煮詰まっている案件のアイデアがふと湧いてくることがあるようです。
実際に、あるオーラルケア商品の企画で悩んでいた際は、ふと自分の裸と周りの裸を比べてみて、「最近ちゃんと鍛えているからか、なんか身体が引き締まってきた気がするなぁ。というか、あの商品も『歯ぐきを引き締める』っていう効果あったなぁ。それってもしかして、筋肉を鍛えるのと一緒なのか? 歯ぐきのマッチョ化か!」と思い付き、企画にして提案までしたこともあるそうです。
寄り道は「無駄な時間」と罪悪感を感じる人へ
これらの寄り道は、PCに向かって作業しているわけでもなく、誰かと打ち合わせをしているわけでもない。一見すると「サボっている」「無駄な時間だ」と思われてしまうかもしれませんが、この「あえて目的もない時間を過ごすこと」が、企画やアイデアを生むのにとても効果的なのです。
「あえて目的も無い時間を過ごすこと」は、何も寄り道には限りません。YouTubeやTikTokなどのSNSを見ている時間や、リモートワーク中にちょっとベッドでごろごろする時間もあてはまるかもしれません。一見無駄に感じるこの時間こそが、企画・アイデアが煮詰まってしまっている時に、とても重要な時間に変わるのです。
もし、罪悪感を覚えてしまう方がいらっしゃれば、それらの時間を自分がアイデアを生むための“儀式・セレモニー”であると位置付けてみてはどうでしょうか。どんなに忙しくても、どんな場所にいても、あえて目的が無い時間を過ごす時間をスケジュールに組み込むことで、結果として、より良いアイデアが思い付き、良い仕事へとつながっていくと思われます。
いかがでしたでしょうか。読者の皆さんに「明日から寄り道してみよう」「あえて目的のない時間を過ごしてみよう」と思ってもらえたら幸いです。
人は、同じ行動を続けるとそれが習慣になり、刺激を感じづらくなるように思います。だからこそ、いつもと違うことをして外的刺激をわざと受けたり、いつもしていることをあえてやめて、内的な部分と向き合ってみたりすることで、新たなアイデアが生まれるのではないでしょうか。
さて、今日はどんな“寄り道”をしよう、どんな“時間”を過ごそう。そう考えてスケジューリングするのも、企画・アイデアの一つなのかもしれません。
著者紹介:楠田勇輝
株式会社博報堂 関西支社第一ビジネスデザイン局
イノベーションプラニングディレクター/ヒット習慣メーカーズ
2011年 博報堂に入社。
入社以来、マーケティング職に従事し、お得意先や世の中の課題と向き合う。基本、テレビっ子。ドラマと、阪神タイガースをこよなく愛し、阪神の勝ち負け次第で翌日の気分がちょっと違う虎吉。
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