祖業復活か、二の舞か イトーヨーカ堂×アダストリアの新ブランドをプロはどう見る?:磯部孝のアパレル最前線(7/7 ページ)
セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂が、肌着などの一部を除いて衣料品事業から撤退し、食料品を中心に展開していく方針を示したのが2023年3月のこと。そのわずか1年後の今年2月、アダストリアと手を組んだライフスタイルブランド「FOUND GOOD」をスタートした。
FOUND GOODに足りないもの
FOUND GOODが根付き支持を集めていくには、時間が必要だ。アダストリアの旗艦ブランドであるGLOBAL WORKでさえ、年商516億円、219店舗展開まで到達するのに30年という時間を要している。これまでの数多の取り組み、検証、撤退を繰り返してきたイトーヨーカ堂が、IPOの話まで出ている中で、FOUND GOODの成果についてどのくらいの中長期のビジョンを描いているのかが気になるところだ。
FOUND GOODは長らく営業を続けている店舗内の改装という打ち出しであり、これでは変化や鮮度を創出するのは難しい。特に改善を繰り返した前の売場からでは、変化量も小さくなってしまい、インパクトにも欠ける。
今回の取り組みにおける最大の肝は、屋号にあったのではないかと筆者は考える。イトーヨーカ堂の衣料品売り場に、ズバリ「GLOBAL WORK」や「GLOBAL WORK plus」くらいの分りやすさと訴求効果がなければ、これから展開予定の64店舗分の売り上げ、在庫リスクに見合う取り組みだったのか。少々首を傾げてしまう。
天候に恵まれたゴールデンウイークの午後、イトーヨーカ堂北砂店を訪れてみた。北砂店は木場店と同様で、FOUND GOODと同じフロアにユニクロが入っている。店舗の入り口横に位置するユニクロでは、法被姿の店員が「ゴールデンウイーク祭り」と言わんばかりに声掛けし、にぎやかな様子だった。
そのフロアの最奥(反対側入り口からは一番手前)に位置するFOUND GOODは物静かで、マネキンやPOPが語りかけてくる。ゴールデンウイーク商戦における売場の雰囲気の違いが、両社の商いについての本気度の違いであるような気がした。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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