祖業復活か、二の舞か イトーヨーカ堂×アダストリアの新ブランドをプロはどう見る?:磯部孝のアパレル最前線(6/7 ページ)
セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂が、肌着などの一部を除いて衣料品事業から撤退し、食料品を中心に展開していく方針を示したのが2023年3月のこと。そのわずか1年後の今年2月、アダストリアと手を組んだライフスタイルブランド「FOUND GOOD」をスタートした。
プロが見る、FOUND GOODの弱みは?
弱みは、FOUND GOODというブランド知名度の低さである。FOUND GOODはイトーヨーカ堂の衣料品売場を改装してできた店舗であり、売場の立地は変わらない。4月に開催した商品戦略発表会において、改装後に成果が出たとして紹介された木場店でも、筆者が訪れた休日の午後、同フロアに位置するユニクロを目掛けて歩いていく生活者が圧倒的に多かった印象だ。
改装後の成果といっても、すでにテナントされている専門店との比較ではなく、あくまで自社の衣料品売場との前年比較で数字が向上しているという話にすぎない。イトーヨーカ堂はFOUND GOOD導入の狙いの1つに食品購入客の買い回りを上げているのだが、習慣化された生活者の導線を変えるのは、なかなか労力が必要だ。
店によっては、婦人服の「GALLORIA(ギャローリア)」や紳士服の「Kent(ケント)」といった自社ブランドや「Golden Bear(ゴールデンベア)」や「Hush Puppies(ハッシュパピー)」といったコンセショナリーストア(※)など、顧客が付いている店舗と同床の比較・検証も可能だろう。だが、知名度の低いFOUND GOODが顧客の付いているブランドやストア以上に支持を集められるのか、現段階では全くの未知数としかいいようがない。
(※)コンセショナリーストアは、安い家賃+売り上げの数パーセントをスーパー側に支払う契約の店。テナントストアはコンセショナリーストアに比べ家賃は高いが、売り上げは全てテナント側に入る。
生活雑貨もダイソーやセリア、Standard Productsといった店が増え続けていることから目新しさはアピールできない。ファッションに関しても大衆向けデザインを意識しているから、これといった特徴もない。商品の価格帯も高価格な専門店ほど高くなく、ロードサイドの郊外型店舗よりも安くない。中間価格帯による品ぞろえという、あくまで生活者の感度に訴えていく戦略のようだ。
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