異動・配属を「手挙げ」中心に移行すべき、これだけの理由(2/4 ページ)
ジョブ型人事制度やキャリア自律への関心が高まる中、人事異動・配置はどのように変わっていくのだろうか。今後は社内公募などの「手挙げ」異動を増やしていけばよいのではという企業の声が聞かれるが、それだけでは十分ではない
人事部は人材起点(適材適所)の異動を主導せよ
事業戦略と人事戦略との連動が強調される中、各部門主導によるポジション起点の人事が増えていくことが想定される。ジョブ型という観点ではポジション起点の適所適材異動は合理的であり、当然の方向性だ。ただ、現在すでに人材起点の異動とポジション起点の異動は半々であり、この流れのまま進むとほとんど全ての異動がポジション起点のものになるかもしれない。問題は、ポジション起点の異動ばかりでよいのかという点だ。
[図3]に、人事異動・配置の実務上の優先順位を挙げた。大抵は組織制改廃への対応など「(1)要員確保・要員適正化」の優先順位が最も高い。ローパフォーマーは放置できないので「(2)ミスマッチ解消」や、ポジションによっては「(3)不正防止」のための異動も行う必要がある。昨今では介護などの「(4)個人事情対応」も欠かせない。ここまでは、必要最低限の人事異動ともいえる。
さらに、業績向上のために「(5)マンネリ防止・組織活性化」の異動も行いたいとの各部門ニーズもある。従業員が期待する計画的な「(6)キャリア開発・能力開発」のための異動については、その重要性は重々承知していても、実態としてはなかなかそこまで手が回らないという企業も多いことだろう。
至極当然ながら、各部門主導の人事異動では、計画的な「キャリア開発・能力開発」のための異動よりも、短期的な業績向上のための異動が優先する。人材起点の異動は「個人事情対応」に限らない。計画的な「キャリア開発・能力開発」のための異動は人事部が主導する必要がある。
企業へのヒアリング調査(※1、※2)では、各部門主導の場合、戦力として機能しているミドルパフォーマーは異動配置の目配り対象になりづらいことが分かっている。ポジション起点の異動が大半を占めることはよしとして、人事部は人材起点(適材適所)の異動、特に「中長期視点のキャリア開発・能力開発を目的としたミドルパフォーマーの異動配置(特に部門間異動)」を積極的に主導すべきだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
窓際でゲームざんまい……働かない高給取り「ウィンドウズ2000」が存在するワケ
「ウィンドウズ2000」「働かない管理職」に注目が集まっている。本記事では、働かない管理職の実態と会社に与えるリスクについて解説する。
何を学べばいいか分からない 社員3万人に「気付かせる」日立の大規模リスキリング
リスキリングの注目が高まる中、いったい何を学ぶべきなのか、分からない社員も少なくないはず。ジョブ型を導入する日立は、社員3万人を対象に、大規模なリスキリングに取り組んでいる。社員に「気付かせる」仕組みとは?
「管理職になりたくない」 優秀な社員が昇進を拒むワケ
昨今は「出世しなくてもよい」と考えるビジネスパーソンが増えている。若年層に管理職を打診しても断られるケースが見受けられ、企業によっては後任者を据えるのに苦労することも。なぜ、優秀な社員は昇進を拒むのか……。
「管理職辞退」は悪いこと? 断る際に重要な2つのポイント
昨今「管理職になりたくない」「管理職にならない方がお得だ」――という意見が多く挙がっている。管理職にならず、現状のポジションを維持したいと考えているビジネスパーソンが増えているが、管理職登用を「辞退」するのは悪いことなのだろうか……?
「上司からの指示・命令のない組織」はうまくいく? GMOグローバルサイン・HDの挑戦
上司が部下に指示・命令し、部下は指示に従って業務を遂行する――このような、職場で当たり前に目にする光景を打破しようとする企業がある。GMOグローバルサイン・ホールディングスは4月から、「ホラクラシー型組織」を本格導入。「上司からの指示・命令のない」組織は、本当にうまくいくのだろうか……?
「ホワイトすぎて」退職って本当? 変化する若者の仕事観
「ホワイト離職」現象が、メディアで取り沙汰されている。いやいや、「ホワイトすぎて」退職って本当? 変化する若者の仕事観を考える。
時短勤務や週休3日が「働く母」を苦しめるワケ 働き方改革の隠れた代償
男性育休の促進、時短勤務やテレワーク、フレックスタイム制といった従来の制度をより使いやすくする動きが進んでいる。子育てをしながら働き続けるためのオプションが増えるのは良いことだ。しかし一方で、「これだけの制度があるんだもの、仕事も子育ても頑張れるでしょ?」という圧力に、ますますしんどくなる女性が増えてしまう可能性も。
指示ナシ組織で中間管理職を救え! 「忙しすぎ問題」の背景に2つの元凶

