2015年7月27日以前の記事
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異動・配属を「手挙げ」中心に移行すべき、これだけの理由(3/4 ページ)

ジョブ型人事制度やキャリア自律への関心が高まる中、人事異動・配置はどのように変わっていくのだろうか。今後は社内公募などの「手挙げ」異動を増やしていけばよいのではという企業の声が聞かれるが、それだけでは十分ではない

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異動配置は「手挙げ」中心に移行

 手挙げ異動は今後増えていくだろうが、企業によってかなり濃淡がありそうだ。社内公募制度があっても、新規事業などの「ごく限られたポジション」を対象とする企業が48.2%と約半数を占めており(※3)、既存事業の営業職などの一般的ポジションの公募については消極的だ。「転出元の欠員補充が難しい」「戦略配置がやりにくい」など、大規模な社内公募に慎重な声も目立つ(※1)。

 ジョブ型導入企業でも、手挙げ異動を基本とするのはグローバル環境への適合を強く意識する「グローバル志向型」の企業だけで、管理職層を主対象として職能資格的処遇観からの脱却を目指す「組織長厚遇型」企業、役割等級やハイブリッド型を採用し、柔軟に職務給的要素を取り入れようとする「フレキシブル型」企業は社命異動重視のスタンスだ(※4)。

 人事異動・配置をほぼ全面的に手挙げに切り替える企業よりも、従前通り、限られたポジションだけ社内公募するという企業のほうが多数派だろうと予測するが、それでは「企業が70歳までの雇用を求められる時代」に対応できない。企業に雇用責任や努力義務があるように、従業員にも「自分で考え、何とかしよう」というスタンスが求められるし、おそらく、そうあろうとする人が多いはずだ。それがキャリア自律というものだ。

 採用の前に社内の人材を生かすことを考えたり、転職の前に社内で活躍できる場所を探したり、それが基本的な手順というものだ。そのためには、一般的ポジションを含む大規模な社内公募が欠かせない。人事異動・配置は基本的に社内公募で行う方向を目指すべきだ。


図4:社命異動と手挙げ異動(出所:筆者作成)

 その上で、社命異動でしか対応できない異動ニーズに対して社命異動で補完することをお勧めしたい。そのニーズとは、次の2つだ。

 まずは、「次世代経営人材のタレントマネジメント」対応である。次世代経営人材として、これまで以上に本物のゼネラリストが求められている。次世代経営人材のタレントプールは、コーポレート系、事業系をまたいだ広域ローテーションの対象にすることが定番だ。異動先は広域というだけでなく、厳しいミッションを背負うタフアサインメントだ。タレントプールにエントリーされていることを本人に通知しない企業が散見されるが、プール人材に次世代経営人材としての期待と育成方針を説明し、本人のコミットメントを確認したうえでの運用が必要である。


異動・配属を「手挙げ」中心に移行せよ(写真はイメージ、提供:iStock)

 次に、「手を挙げない人」への対応だ。例えば、現職場にミスマッチのローパフォーマーは手を挙げないからといって異動対象者にしないわけにもいかない。ここで目配りすべきは、むしろ、戦力として機能しているミドルパフォーマーだ。現職場で特に問題ないがゆえに同じ仕事を長期間担当しがちになる。同じ仕事の担当が長いことと専門性が高いこととはイコールではない。専門性を高めるには、同じ職種でもある期間で顧客を変える、製品を変えるなどの「幅出し」の機会が必要だ。ミドルパフォーマーに対しては、本人も周囲もその必要性を見逃しがちである。同一部署長期在籍者は定期的に人材起点の異動候補者リストに載せるべきだ。これは、異動シミュレーションの対象にせよということで、必ずしも実際にローテーションせよということではない。

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