2015年7月27日以前の記事
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審査・担保不要で「最大100万円」 PayPayの“借りない資金調達”は何がすごいのか決済データ活用で与信(2/3 ページ)

PayPayが決済データを活用した新ビジネス「PayPay資金調達」を開始。データを使って加盟店の将来の売り上げを予測、その一部を買い取る形で資金を提供する。PayPayを使えば使うほど多くの資金が調達できるようにすることで、店舗のPayPay利用をさらに促進するのが狙いだ。

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「融資」と何が違うのか PayPay資金調達の仕組み

 PayPay資金調達は売掛債権の買い取り(ファクタリング)の一種だ。銀行が行ういわゆる融資と違い、審査も担保も不要だ。資金調達の規模は店舗ごとに事前にPayPayが設定する。また精算のペースは月次売り上げの5〜50%の範囲で提示された中から店舗側が選べる。

 「PayPayご利用実績から、今後の売り上げを予測し、その範囲内で資金調達可能な金額を事前にお伝えします」と柳瀬氏は説明する。売り上げ予測は過去の実績だけでなく、店舗の業態や立地なども加味して算出する。


PayPay資金調達の仕組み。過去のPayPayでも取引額をもとに将来の売上高を予測、将来売り上げの一部を買い取る形で、資金調達を可能にする

 ここで疑問なのが、なぜあえて「融資」ではなく「ファクタリング」の形を取ったのかという点だ。実はPayPayは、グループ会社のPayPay銀行を通じて、すでに「PayPay銀行ビジネスローン」という融資サービスを提供している。審査はあるものの、最大100万円まで借り入れ可能だ。

 「ビジネスローンは少し規模の大きい資金ニーズに応えるもの。一方、資金調達サービスは、手軽さをウリに100万円以下の少額の資金ニーズを狙ったサービスです」(柳瀬氏)

 あえてファクタリングの形式を取ることで、金融ライセンスなしでもサービス提供でき、手続きの簡便さを実現できる。2つのサービスの住み分けを図っているというわけだ。


PayPayの管理画面から、調達したい資金額を選び、将来売り上げの何パーセントを使って精算するかを決める。数クリックで申し込みが終わり、すぐに入金される

 調達金額に対する手数料は3〜18%。金額が大きく返済期間が長いほど、PayPayとして資金を回収するリスクが高まるため、手数料率も高くなる仕組みだ。

 ただし融資における金利とは異なり、期間によらず料率は一定だ。例えば、100万円の調達なら期間によらず手数料は10万円(手数料率10%)といった具合である。そのため、例えば手数料率10%で1カ月かけて返済したら、年率に換算すると120%になってしまう。規制がないため、実質的なコストが融資よりも高くなってしまう可能性があるのには注意が必要だろう。

PayPay利用データを使って与信

 PayPay資金調達の技術的な特徴は、PayPay決済のデータを用いて与信を行うことだ。

 「PayPayのトランザクションデータを用いて、加盟店ごとの将来の売り上げを予測するモデルを内製で構築しています」と柳瀬氏は説明する。予測の要因としては加盟店の業種や立地、固定客比率などさまざまなデータを活用。機械学習の手法を用いて日々予測精度を高めているという。

 予測には販促実施時の売り上げ増といった特殊要因も加味している。「例えばPayPayのクーポンキャンペーンに参加している加盟店は、売り上げの伸びが大きい傾向にあります」(柳瀬氏)。こうした販促ノウハウの有無も、店舗の売り上げ予測を左右する要因になるわけだ。

 一方、予測とは裏腹に売り上げが立たない可能性も常にある。この点、資金調達実行後も売り上げデータを日次でモニタリングし、リスクの兆候を察知すれば速やかにアクションを取れるようにしているという。「予測がずれた場合に、どこまで許容するか。その線引きを日々調整していくことが重要になります」(柳瀬氏)

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