事故21%減 あいおいニッセイ「安全運転」をサポートするアプリ、提供の狙いは?:前編(1/3 ページ)
あいおいニッセイ同和損害保険は1月、これまで自動車保険などの契約者向けに提供していた4つのアプリを統合した。これは「安全運転」をサポートするアプリで、閲覧者は事故頻度が21%低い。
あいおいニッセイ同和損害保険は1月、これまで自動車保険などの契約者向けに提供していた4つのアプリを統合し、新たに「あいおいニッセイ同和損保アプリ」の提供を開始した。もともと商品ごとに用意していたアプリを、一つにまとめた形だ。
社内でも関係部署はバラバラ、関係者は50人以上。パートナー企業も国内外で5〜6社と多岐にわたり、コントロールには非常に苦労したという。
そもそも、保険の支払い業務だけであれば、アプリは必要ない気もする。苦労も多い中で、なぜこのような大きなプロジェクトを推進したのだろうか。そして、どのように関係者を取りまとめ、統合を実現していったのか。
なぜアプリが必要? 保険会社ならではの事情
同社が自動車保険の未来の形として力を入れているのが、クルマ自体やカーナビ、ドライブレコーダーなどから得られるデジタルデータを活用し「事故の未然防止」に力点を置くテレマティクス損害保険(テレマ保険)だ。自動車保険は、これまで運転者の年齢や過去の事故歴などを元に保険料を算定するのが基本だった。しかし速度や急ブレーキなどのデータを取得できれば、安全運転を行う人には保険料を割り引くなど、より合理的な保険料が設定できる。
さらに安全運転度合いをドライバーにフィードバックできれば、安全運転を心掛けるインセンティブにもなる。安全運転が増えれば、ドライバーは保険料が安くなり、保険会社は支払う保険金が減り、社会全体では事故が減る。三方よしとなるわけだ。
同社のテレマ保険は、もともとトヨタのコネクティッドカーを対象とした「タフ・つながるクルマの保険」からスタートした。そこから、独自車載器を設置することで幅広いクルマで利用できる「タフ・見守るクルマの保険プラスS」、さらに通信機能付きドライブレコーダーと連携する「タフ・見守るクルマの保険プラス(ドラレコ型)」へと商品ラインアップを拡充してきた。
そして新商品のリリースごとに、新たなスマホアプリも開発、提供してきた。一見、自動車保険でわざわざアプリを提供する必要があるのだろうか? と思うかもしれない。そもそも損害保険は日常的に意識する必要がないサービスだからだ。契約更新や住所変更、車両変更のとき、また事故に遭ってしまったときに初めて意識に上るのが自動車保険だ。そんなサービスになぜアプリが重要なのか。
実は保険会社からすると、何もなければ意識されないということは、日常的に顧客との接点がないことを意味する。もし平時の顧客接点を増やして、顧客を知ることができれば、解約などを防止してLTV(顧客生涯価値)も向上できるし、他の保険商品のニーズをくみ取ってクロスセル提案もできる。頻繁に使ってもらえるようなアプリを提供できれば、強力なマーケティングツールになる。
ではどうやって顧客に日常的にアプリに触れてもらうのか。そこにテレマ保険がぴったりとハマった。「テレマ保険のアプリは、運転するごとに触れる、高頻度で使うアプリ」(デジタルマーケティンググループ 鹿庭美星課長補佐)だからだ。
テレマ保険ではドライバーの運転情報を収集し、それを「安全運転スコア」という形でスコア化している。これはもちろん保険料の割引の計算のためにも使うのだが、それだけでなくドライバーが運転するごとに、”どのくらい安全運転だったか”の指標として表示する機能も用意したのだ。
安全運転をすれば保険料が割り引かれる。となれば、クルマに乗るごとに「さっきの運転はちゃんと安全運転だったかな?」と知りたくなるのは人情だ。
「契約者の多くが自分の安全運転スコアを継続的にチェックしている。コアなドライバーは、運転のたびに毎回見ている人もいる」(自動車保険部 推進グループ担当課長の若園尚也氏)
安全運転スコアを軸にして、ドライバーは自分の運転の評価を知るためにアプリを起動する。そうやってアプリへの接触頻度が増せば、同社は強力な顧客接点を得られる。月間運転レポートなども、メールの2〜3倍の開封率があるプッシュ通知で提供しており、さまざまな手法で顧客をアプリに誘引している。
そして、この組み合わせをさらに強化するには、商品ごとの別々のアプリではなく、一つの統合アプリが必要だった。それが今回のアプリ統合の狙いだ。
「テレマ保険は、時代の変化に合わせてデバイスも多様化した。保険は1年契約なので、継続のタイミングで契約を見直すことが多い。アプリを一つにすれば、そのたびに別のアプリをダウンロードする必要がなくなる。また保険内容が切り替わっても、操作系も同じにできる」(鹿庭氏)
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