「ニッセン売却」が象徴するセブン&アイEC構想の大失敗 カタログ通販に残された利用価値とは:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
5月9日、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)は、子会社の総合通販企業ニッセンホールディングスの全株式を売却すると発表した。これは同社が推し進めた、ネットをベースに連携させるオムニチャネル戦略「オムニ7」の失敗を意味する。EC全盛時代に、売却されるニッセンにはどんな価値が残されているのだろうか。
かつて国内有数の総合通販企業だったニッセン
ちなみに、ニッセンがかつて国内有数の総合通販企業だったことをご存じだろうか。若い世代は記憶にないかもしれないが、ECが当たり前ではなかった時代、通販チャネルと言えば、テレビ、ラジオショッピングもしくは、カタログを見て紙や電話で注文するカタログ通販が主流だった。
ニッセン全盛期の頃は、大きな小売店に行くとレジの周辺や出入り口に、分厚いカタログが積まれていて、無料で持ち帰られるようになっていた。こうして新規顧客を開拓しつつ、既存の顧客にはカタログを送付することでリピート購入を獲得するという手法で、ニッセンは2014年12月期には2084億円を売り上げていた(図表2)。
ニッセンは2013年12月にセブン&アイと資本業務提携し、2016年11月には完全子会社となっている。2011年以降の収益の落ち込み、2014年から続く売上減から分かるように、ニッセンのビジネスモデルはうまくいかなくなっていた。この背景はいわずと知れた通販のECシフトであり、注文するのも探索するのもネットやスマホ経由で、というのが当たり前になってしまったからである。
こうなると、ニッセンが大量に無料配布する分厚いカタログのコストは無駄になる。既存顧客に送付しても反応が少なくなり、結果として採算が合わなくなった。そして、損益が均衡するところまでカタログの縮小とECシフトを進めることで、400億円弱の売上規模でなんとか踏みとどまっている、というのが現状である。
ちなみに経済産業省の調査によれば、EC物販市場規模(コンテンツや旅行などのサービス取引は除いて)は、2005年の1.7兆円から2022年14兆円へと8倍以上に拡大している。一方、この流れの中で、カタログ通販市場は急速に縮小へと向かいつつあるといえるだろう(図表3)。
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