Sansan、想定を上回る大幅な「増収増益」 24年5月期、絶好調の要因は?:3年間で売上高を倍増を目指す(1/2 ページ)
Sansanは7月11日、2024年5月期の通期決算を発表し、大幅な増収増益を達成した。主力の営業DXサービス「Sansan」が堅調な成長を維持する中、インボイス管理サービス「Bill One」が前期の2.5倍以上の売上高を記録するなど高成長を継続。Sansanは、高成長を継続しながら収益性の向上も視野に入れた新たな成長ステージに入ったといえる。
Sansanは7月11日、2024年5月期の通期決算を発表し、大幅な増収増益を達成した。主力の営業DXサービス「Sansan」が堅調な成長を維持する中、インボイス管理サービス「Bill One」が前期の2.5倍以上の売上高を記録するなど高成長を継続。全体の業績をけん引した。
来期も引き続き高い成長率を見込むほか、2025年5月期から2027年5月期にかけての中期財務方針も発表。今後3年間で売上高を倍増させる野心的な目標を掲げた。さらに、初の自己株式取得を決定し、成長投資を継続しつつ株主還元策にも着手する方針を示した。Sansanは、高成長を継続しながら収益性の向上も視野に入れた新たな成長ステージに入ったといえる。
大幅な増収増益 開示レンジを上振れ
売上高は前年同期比32.8%増の338億7800万円、調整後営業利益は同81.5%増の17億900万円となった。売上高は期初に公表した業績予想の開示レンジの上限を超過し、調整後営業利益は中央値を上回る実績となった。
売上総利益率は前年同期比0.5ポイント減の85.1%となった。これは、相対的に利益率の低い「Bill One」の構成比が高まったことが主な要因だ。ただしBill Oneの売上総利益率は、インボイス制度が開始された2023年10月から11月を底として改善が続いており、第4四半期では80%を超える水準となった。
経常利益は前年同期比903.3%増の12億2400万円、当期純利益は9億5300万円(前年同期は1億4100万円の損失)となった。前年同期に比べ大幅な増益となった背景には、前年同期に信託型ストックオプションに係る一時的な費用を計上していた影響がある。
Bill OneのARRは76.8億円に 高成長継続
Bill Oneは2024年5月期も高成長を維持し、売上高は前年同期比155.5%増の61億6800万円となった。2024年5月末におけるARR(年間固定収入)は76.8億円に達し、掲げていた75億円以上という目標を上回った。
Bill Oneの有料契約件数は前年同期末比78.1%増、有料契約当たり月次ストック売上高は同13.5%増と、顧客基盤の拡大と単価の上昇がともに成長をけん引した。また、直近12カ月平均月次解約率は0.33%と、低水準を維持している。
橋本宗之CFOは「営業体制の強化や価格体系の適正化などを進める過程で、営業リソースを中堅・大企業に対して、より集中的に配分している」と説明した。その結果、第4四半期の契約純増数は以前に比べて減少したものの、「事業戦略が反映された実績となっている」とした。
次の成長に向けて顧客単価の上昇を狙い、多角化と他領域への進出も順調だ。請求書受領サービスから始まったBill Oneだが、2022年2月に請求書発行機能を追加し、2023年6月には法人向けクレジットカード「Bill Oneビジネスカード」の提供を開始。さらに2024年6月からは経費精算機能「Bill One経費」の提供を始めるなど、着実にサービス領域を拡大している。
Bill Oneは法人カード「Bill Oneビジネスカード」や経費精算の「Bill One経費」、住信SBIネット銀行の法人向けBaaSを活用した「Bill One発行」など、フィンテック領域に広く展開を始めている
請求書受領以外のサービスの売上高比率については、今期末時点では大きな割合を占めるには至らないとしつつも、橋本氏は今後2〜3年での成長に期待を示した。特に「Bill One経費」については「非常に有望なプロダクト」と位置付け、「新規受注分で言うと、Bill Oneの請求書受領と肩を並べるぐらいというのはまだ難しいが、今年度中にそこそこの割合を占めたい」と期待を述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
シンプル・イズ・ベスト Sansanがたどり着いたインサイドセールスの最適解とは?
Sansanのインサイドセールス部門が2023年12月に大幅な組織改革を実施した。顧客の従業員規模をベースにした「シンプル」で「分かりやすい」組織にしたという。組織体制を変更し、どのような変化があったのか。
案件減らし売上2倍に アドビの最強インサイドセールス部隊は、いかに大口受注を勝ち取るのか
アドビでは、約2年ほど前からBDRを強化している。明確に絞ったターゲット企業からの受注獲得に注力した結果、とあるチームでは≪案件数が半数以上に減少したにもかかわらず、受注金額が倍増≫した。インサイドセールスは「若手の登竜門」として新人が多く配置されるケースが多いが、同社のインサイドセールス組織は一味違うという。
【徹底解説】インサイドセールスの「9割」をAIとツールで完結する方法
AIやセールステック導入の高まりから、最近はインサイドセールスの在り方に変化が起き始めている。筆者は、テクノロジーの進化によってインサイドセールスの業務は9割自動化すると予想している。今後さらにAI活用が進むことが予想される中、人間が担うべき役割はどう変化するのだろうか。
「THE MODEL型」の弊害はAI活用にも 米国の営業組織が重要視する「RevOps」とは
AI活用が急速に進む中、注目度が高まるRevenue Operations。米国では注目度が高まっていますが、日本でも根付くのでしょうか?
窓際でゲームざんまい……働かない高給取り「ウィンドウズ2000」が存在するワケ
「ウィンドウズ2000」「働かない管理職」に注目が集まっている。本記事では、働かない管理職の実態と会社に与えるリスクについて解説する。

