「みどりの窓口は減ったけど、便利になったね」は不可能か いや、やればできるはず:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
みどりの窓口の約7割減らすと2021年に発表していたJR東日本が、「夏季における窓口開設等について」という報道資料を発表した。お盆期間に混雑が想定されるみどりの窓口に、臨時窓口を増やす。6つの駅で臨時窓口を開設し、関東エリアの29駅、東北エリアの9駅、信越エリアの6駅で窓口の数を増やす。
JR西日本もみどりの窓口を大幅に減らした。JR東日本より2年早く、2019年に「180駅のみどりの窓口を2030年までに30駅程度に減らす」と発表している。代わりに販売できる券種を増やした「高性能券売機」、または「みどりの券売機プラス」を配置する。「みどりの券売機プラス」はJR東日本の「話せる券売機」とほぼ同じ機械だ。
さらにJR西日本は、AIキャラクターと対話しながら切符を購入できる「みどりの券売機プラスAI」も導入している。2023年3月18日から大阪駅(うめきたエリア)で稼働しているほか、2024年3月1日から出雲市駅に導入した。
一方で、金沢駅と富山駅は2024年8月1日から有人窓口を増やす。金沢駅は1年前から窓口の混雑が顕著になり、1時間待ちの行列ができていた。そこで2024年4月から整理券システムを使って混雑を解消し、あわせて待機用の椅子を30脚用意した。行列は減ったけれども待ち時間は変わらず、増員で対応することになった。
JR九州、JR四国も窓口廃止を進めており、地元紙が混雑と利用者の不満を報じている。JR東海は2013年から「お客さまサポートサービス」を進めている。これは近距離券売機や指定席券売機にモニター付きインターホンを設置し、案内センターから遠隔サポートするほか、必要に応じて現地対応係員が駆けつける。「新しいサポートサービスを導入します」と前向きに発表しているけれども、実はこれと引き換えに駅は無人化する。
ビジネス的な考え方も分かる。みどりの窓口は年中混雑しているわけではない。大きな駅以外は、帰省や大型連休、春秋の定期券更新時期を除くと客が減り暇を持て余してしまう。ぼんやりと座って客を待つだけの係員配置はムダだ。だから窓口を機械に置き換えたほうがいい。しかし、指定席券売機の改良が追いつかないから、大混雑時に対応できない。
窓口の人員を減らし機械化する方針は、ビジネスとして間違っていない。しかし客商売としては間違っている。タバコ屋が減っていくからとタバコの自販機を開発したけれど、そのタバコ自販機も姿を消し、結局コンビニの対面販売に戻ったではないか。きっぷはタバコのような嗜好(しこう)品ではないから、「誰もが使える公共交通」のあり方としても違和感がある。
窓口にコストをかけられない。しかしお客はなかなか機械やネットに順応してくれない。では、どうしたらいいのか。
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