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「みどりの窓口は減ったけど、便利になったね」は不可能か いや、やればできるはず杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

みどりの窓口の約7割減らすと2021年に発表していたJR東日本が、「夏季における窓口開設等について」という報道資料を発表した。お盆期間に混雑が想定されるみどりの窓口に、臨時窓口を増やす。6つの駅で臨時窓口を開設し、関東エリアの29駅、東北エリアの9駅、信越エリアの6駅で窓口の数を増やす。

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きっぷを出張販売してみたらどうか

 1つの方法として、臨時窓口を増やす仕組みを整えよう。そもそもみどりの窓口の機械(マルス端末)は、なぜ今も机のように大きいのか。昔のワープロも机サイズだったけれど、どんどん小型化した。やがてPCになり、いまやタブレットでも文書をつくれるというのに。

 今の技術なら、マルス端末も小さくして可搬方式にできるかもしれない。ふだんは収納しておき、需要の多いときにコンコースに並べて指定券を発行する。花火イベントの帰りの駅できっぷを売る屋台を出す、あのスタイルにできないか。


きっぷを出張販売できないか(出典:ゲッティイメージズ)

 オペレーター不足は定年退職者の再雇用や、パート、アルバイトを採用して教育する。通年で雇用するよりコストを下げられる。臨時雇用より通年雇用が望ましいなら、この時だけ事務職、管理職に応援してもらってもいい。慣れないお客がたどたどしく指定席券売機を操作するより、毎日、何回も操作する係員のほうが発券の速度を高められ、行列を解消する時間も短くなる。

 車掌さんが持っている端末のような小型マルス端末を無線でサーバーに接続できれば、みどりの窓口が駅にある必要もない。キッチンカーのようなワゴン車に端末を載せて、出張窓口を展開してはどうか。携帯電話ショップがショッピングモールの片隅に屋台を出して契約者を募るように切符を売れる。

 窓口を駅の外につくれば、きっぷ購入者を駅から分散できる。小型端末を開発しなくても、係員がタブレットでえきねっとを操作してきっぷを予約し、駅で発券して取りに来てもらうか、郵送(送料負担は利用客)してもいい。

 通学定期券は駅ではなく、学校で販売したほうが効率的だ。新学期の初めに学校へ行き、定期券を出張販売する。生徒や学生は新学期に教科書を買うし、体操着なども買う。その並びで定期券を買ってもらう。同様に通勤定期も職場に出張して販売する。社員が個々に駅に行くことを考えれば歓迎されるのではないか。販売だけではなく、モバイルSuica定期券の講習会でもいい。

 そもそも売り物は紙片だ。軽いし小さいし、必ずしも店で売る必要はない。そう考えると、店番をしてお客さまを待つよりも、外に出てお客さまを見つけるやり方だってある。いや、それが商売の基本だ。

 「みどりの窓口は減ったけど、便利になったね」にするためには、発想の転換が必要だ。

 JRさん、釣りばかりではなく、狩りをしてみませんか。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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