タカラトミーの“出産祝い金200万円”はなぜ実現したのか 「子育て支援だけではない」改革の全体像とは?(1/2 ページ)
タカラトミーが7月から導入した、「出産育児祝い金」として社員に200万円を支給するという新制度。担当者は「あくまで人事制度改定の一部」にすぎないと話すが、一体どのような位置付けなのか。背景と狙いを聞いた。
タカラトミーが6月28日に導入を発表した、「出産育児祝い金」の新制度。社員もしくはその配偶者が出産した場合に、一律で200万円を支給するという規模の大きさから注目を集めた。
しかし同社の中村真樹氏(人財戦略室DEI推進部部長)は、同制度について「あくまで人事制度改定の一部」だと話す。一体どのような位置付けなのか、改定の全体像と狙いについて聞いた。
”子育て支援以外”にも目配り
7月から適用となった、同社の新たな人事制度。社員の成長を促進し、パフォーマンスを高めることを目的としており、年功序列的な要素が残る等級制度・報酬体系の見直しといった「ジョブ型人事制度への改定」と、出産育児祝い金をはじめとした「両立支援制度の拡充」の両軸から成り立っている。
両立支援制度の拡充においては、子育てに限らずさまざまなライフイベントに適用可能な「ライフサポート休暇制度」を新設した。また、従来導入していた短時間勤務制度について、子育て時の適用条件を未就学児限定から小学校6年生の年度末までに拡大。取得事由に不妊治療を加え、短縮可能な時間も拡大した。「200万円支給」の制度も、こうした施策の一環という。
同社はこれまでも職場環境の充実施策として、コアタイムのないスーパーフレックス制度の導入や、在宅勤務の制度化などに取り組んできた。今回の諸制度の改定は、育児に限らずよりさまざまな社員が、介護や病気、不妊治療といった、直面し得るライフイベントに対応できるようにすることが目的だという。
「『両立支援』というと育児のイメージが強いですが、介護もこれから増えていきますし、不妊治療に対しても支援していきたい。ライフサポート休暇については、一部ですが社員の私傷病も事由に含めています」
「議論はありました」注目集めた"200万円"の理由は?
では、こうした施策の中に「一子出生につき200万円支給」を盛り込んだ理由は何か。「出産や養育費の補助」とともに中村氏が挙げるのは、男性育休の推進だ。
2022年に国が創設した「産後パパ育休制度」の影響もあり、同社の育休取得率は、2023年に「男女ともに100%」を実現している。男性については60%に達したのが3年前で、以前はさらにそれを下回る数値だったが、厚生労働省が1472社に対して調査した、男性育休の平均取得率46.2%(2023年度)と比較すればいずれもはるかに高い。しかし、同社はさらなる定着を進めたい考えだという。
「長期間の取得を推進するため、支給条件も『育児休業を28日以上取得すること』としました。取得した本人や上司へのインタビューを社内で紹介するなど、啓もう活動にも力を入れています。1人が取れば次の人も取りやすくなるそうなので、環境を整えて、人数を増やしていくことが”当たり前”につながっていくと思います。子どもの成長をリアルに体験できることはなかなかない機会ですし、おもちゃの企画やマーケティングといった形で、今後の仕事にも還元されるのではないかと」
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