PayPayはなぜ「デジタル給与払い」に参入したのか メリットとデメリットを分析:お財布がデジタルに(2/4 ページ)
スマホ決済サービスを展開するPayPay社が、デジタル給与払いサービスを開始した。なぜこの分野に参入したのか、メリットとデメリットは何か?
PayPay給与受取がスタート
PayPayは2024年8月9日、資金移動業者の口座への賃金支払(デジタル給与払い)に対応する資金移動業者として、厚生労働大臣の指定を受けたことを発表した。これにより、PayPayは「PayPay給与受取」を提供することが可能となった。
そもそもデジタル給与払いとは、従来の現金や銀行口座振込に加えて、電子マネーやスマホ決済アプリなどのデジタル口座で給与を受け取れるようにする新しい仕組みだ。
日本における給与支払いの歴史を振り返ると、1975年に銀行口座での受け取りが可能になり、1998年には証券総合口座での受け取りが認められた。そして2023年4月、ついに資金移動業者の口座、すなわちデジタル口座での給与受け取りが解禁された。
しかし、デジタル給与払いが可能な事業者は、厚生労働省のガイドラインに準拠し、指定を受けた資金移動業者に限られる。PayPayはこの指定を業界で初めて受けた企業となった。柳瀬氏によると、2023年4月の申請から約1年4カ月を要したという。「開発や検討の範囲が広かった」ことが時間を要した主な理由だという。
サービスは8月14日よりソフトバンクグループ10社の従業員を対象に開始され、2024年内にすべてのPayPayユーザーへの提供を予定している。すでに3ケタの企業から、PayPay給与受取に関する問い合わせがあるといい、順次対応を進める計画だ。
PayPay給与受取。資金移動業者は100万円までの残高を預かれるが、このうち20万円を上限として給与を受け取れるようにする。20万円にした法的な理由はなく、10数万円を入れたいというアンケート結果などを参考に決めたという(筆者撮影)
従業員は最大20万円までPayPayアカウントで給与を受け取ることができ、それを超える金額は事前に指定した銀行口座に自動送金される仕組みだ。
「事業者とPayPayとの間での契約は一切必要ない。銀行振込の仕組みを使うので、システム開発も不要だ」と柳瀬氏は説明する。これにより、企業側の導入障壁を低くすることを狙っている。
受け取った給与はPayPay残高として利用できるほか、月1回は無料で銀行口座への送金が可能だ。また、PayPayが万が一破綻した場合でも、第三者保証機関により速やかに弁済される仕組みを導入し、安全性にも配慮している。
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