2015年7月27日以前の記事
検索
連載

日本語教師はなぜスパイだと疑われたか ツッコミどころ満載であるが、ビジネスパーソンが注意すべき行動世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

ベラルーシで日本人が拘束されていたことが現地のニュース番組で報じられた。スパイとして活動したと疑われており、過去に連絡を取った日本の企業経営者も諜報員だとされている。海外とやりとりする場合はこういったことに巻き込まれるリスクもある。注意が必要だ。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

なぜスパイだと疑われたのか

 まず番組内では、中西氏のPCなどの情報から、日本に帰国した際に「国家公安委員会」に訪問する予定だったと示唆している。国家公安委員会は日本の警察を取り仕切る組織であると紹介されており、彼が情報当局のスパイだったと言わんばかりの見せ方になっている。

 さらに日本の情報機関が中西氏に「使い放題」のクレジットカードを渡していたとして、カードの複写まで見せている。筆者は日本や世界の情報機関を取材しているが、クレジットカードを使い放題にして海外で活動できる情報機関は日本にはないと言える。少なくとも、ベラルーシ国内の情報は日本にとってそれほど重要なものではない。

 日本の情報機関には、警察当局、法務省の外局組織である公安調査庁、外務省の国際情報統括官組織、政府には内閣情報調査室、防衛省・自衛隊には情報本部などがある。こうした組織は基本的に、日本国内で情報活動を行っているが、なかには海外にいる邦人などに情報提供の協力を依頼している組織もある。ただ、いわゆるスパイ工作のような大々的な組織的情報工作をさせることはほとんどない。そうした活動には法的な根拠もなく、協力者が拘束されるような場合には邦人保護もままならないのが実態だ。


拘束された男性は、スパイとして活動していたと疑われている(画像提供:ゲッティイメージズ)

 もちろん、中西氏がそうした組織の関係者と帰国時に会うなど、何らかの協力をしていた可能性はゼロではないだろう。

 ベラルーシ国営テレビのニュース番組では、日本の「軍の情報機関」のハンドラー(諜報員)が、中西氏をベラルーシで運用してスパイ工作をさせていたと示唆している。そのLINEのやりとりのスクリーンショットが紹介されているが、内容はスパイとハンドラーのやりとりを感じさせるようなものではない。

 そもそも日本には「軍」は存在しない。さらに中西氏は「国家公安委員会」と関係があるかのように指摘されているのに、なぜそこに「軍」が出てくるのかも不明だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る