連載
小田急「ロマンスカー新型車両」が登場へ これまでの“常識”を飛び越えられるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
小田急電鉄が9月9日、新型ロマンスカー設計への着手を発表した。しかし報道向け資料に示された情報は少なく、実物写真や完成予想図もないため、鉄道ファンが予想合戦を繰り広げる事態となっている。そこで今回は「新しいロマンスカーが小田急電鉄にとってどんな役割を担うか」を考えてみたい。
“代替”される30000形ロマンスカー「EXE」は異端児だった
1996年に登場した30000形ロマンスカー「EXE」は、小田急電鉄にとって転機となる車両だった。なぜなら、ロマンスカーの特徴である「展望座席」を持たなかったからだ。
1963年に登場した3100形ロマンスカー「NSE」以来、1980年に登場した7000形ロマンスカー「LSE」、1987年に登場した10000形ロマンスカー「HiSE」も先頭車に展望席がある。先頭車両の運転席を2階に上げて、1階の眺望を確保する。ロマンスカーといえば誰もが思い浮かべる仕掛けだ。
1991年に登場した20000形ロマンスカー「RSE」は、運転席を1階に置いたけれど、逆に客席をハイデッキ構造とした。運転席越しに前方、あるいは後方の眺望を楽しめた。さらに中間車の一部を2階建て構造として車窓を楽しむ工夫をした。
ロマンスカーといえば展望席。それが「EXE」にはない。これには賛否両論があるが、鉄道ファンから特に嫌われた。鉄道趣味団体の「鉄道友の会」が投票で選ぶ「ブルーリボン賞」も「ローレル賞」も与えられなかった。ほかに特筆すべき車両があるわけではなく、この年のブルーリボン賞は「該当なし」だった。
しかし、実用面は評価されて「グッドデザイン賞」に選ばれている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
箱根に100億円投資、小田急が挑む「国際観光地競争」
小田急箱根HDは、総額100億円を超える大型投資を発表。目玉は新型観光船だ。2020年に向けて「世界の箱根」を盛り上げていく。一方で課題もあって……。
小田急ロマンスカー「GSE」が映す、観光の新時代
小田急電鉄は来春から導入する新型ロマンスカー70000形「GSE」を発表した。第1編成が3月から、第2編成は第1四半期早期の導入予定。製造はこの2本の予定だ。フラッグシップの特急を同じ車両で統一しない。小田急電鉄の考え方が興味深い。
小田急の特急ロマンスカーが残した足跡
小田急ロマンスカーの60周年を記念して、横浜駅から徒歩数分の原鉄道模型博物館で特別展「小田急ロマンスカー物語」が始まった。流線型に展望車、子どもたちの憧れだったロマンスカー。その功績は小田急電鉄の業績向上にとどまらず、世界の高速鉄道誕生のきっかけをもたらした。
年末年始、なぜ「のぞみ」を全席指定にするのか 増収より大切な意味
JR東海とJR西日本が、ゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始の3大ピーク時に「のぞみ」を全列車指定席にすると発表した。利用者には実質的な値上げだが、JR3社は減収かもしれない。なぜこうなったのか。営業戦略上の意味について考察する。
次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。
