なぜアジア人は「コストコ愛」が強いのか マニアを生むビジネスモデル:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
日本で大人気のコストコ。2024年11月には国内36店舗目がオープンする。米国では、アジア系の“コストコ愛”の強さが話題になっている。実際に米国でもアジア系の来店客が多く、日本や韓国などへの進出も盛んだ。
「派手な消費」の欲求を満たしてくれる
もともとコストコは、1983年に米ワシントン州シアトルで、会員制の店舗としてオープンし、会員数は世界で1億3400万人にも達している。米ニューヨーク・タイムズ紙は、コストコは一度会員になるとほとんど退会しないため「カルト教団に似ている」と表現する。加えて「コストコは表向きは格安ショップであり、食料費をできるだけ節約するための場所だ。だが同時に、米国人のほとんどが持つ『派手な消費』という欲求を満たしてくれる」とも指摘する。
そしてコストコ自体も、アジア人に刺さっていることは認識しており、米国で店舗数が多い地域はアジア系が好んで暮らす大都市圏などに集中している。また、例えば即席ラーメンやうどん、タイ米やキムチなど、アジア系スーパーでしか買えなかったようなものも、今ではコストコで手に入る。それもアジア人会員を意識してのことだ。
日本でもコストコマニアは多く、メディアでも好意的に取り上げられてきた。一方で、2024年3月には、公正取引委員会から勧告が出されている。NHKの報道によると、コストコが「総菜やパンなどの食料品を安売りする際、納入業者に値引き分の一部を負担させていた」という。また、商品の品質に問題があったとして業者に返品する際、「本来求められる納入時点での検査をしていないケース」があったしている。加えて「新規開店の際、試食品を出すための費用を業者側に負担させていた」ケースも確認されたと報じている。
コストコはいつもかなり混んでいて、最近では筆者の取材でも、欠品が多く、欲しいものが手に入らない、といった声を聞く。インターネットでコメントを見ていても、コストコを苦手に感じている人が少なくないことが分かる。
それでも、ビジネス面ではアジア系やアジア諸国で人気なのは間違いない。日本でも「近くにある米国っぽさを感じられるお店」ということで今後も人気は続くと予想され、地方を中心に店舗数を増やしていくだろう。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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