「痛い、脱げる、蒸れる」をニットで解消 オンワード樫山の「靴」が2年で10万足を突破した理由(5/5 ページ)
オンワード樫山のニットシューズブランド「steppi(ステッピ)」が好調だ。どのようにしてヒット商品を生み出したのか。
試し履きの機会を増やし、購入につなげる
販売方法に関しては、ECからスタートして徐々に店舗展開を広げていく施策を取っている。サンダルやスニーカーなどの商品と比較してパンプスはサイズ選びが難しいが、顧客がサイト上に投稿したレビューを読んで、別の顧客が購買を決めるという流れがあり、ECでも一定数の販売につながったという。
「ニットシューズという新規性のあるカテゴリーながら、洋服も含めた公式EC全体よりも返品率が低いんです。『軽くて履き心地がいい』『0.5センチサイズアップしてちょうどよかった』などのレビューを多く投稿いただき、多くの方が購買の参考にされているようです」
その後、オンワード樫山のブランドを扱うショッピングセンターなどの店舗で販売したり、ポップアップストアを実施したりして、試し履きできる場を増やしていった。現在は、販売できる店舗が増えたことから購入場所の割合は、7(リアル店舗):3(EC)になるという。
発売からの2年間でポップアップストアの開催は数十回に及ぶ。駅ビルやショッピングセンター、駅ナカなどで開催したところ、最も売れ行きが良かったのが「駅ナカ」だったという。JR横浜駅構内で8日間、JR品川駅構内で9日間実施し、幅広い層から反響を得た。
人通りが多いのはもちろんのこと、わざわざ店舗内に足を踏み入れずとも商品の目の前を人が行き来するので、商品への接触率がバツグンに高くなり、購買につながったという。
「まず手に持ってみて軽さに驚き、履いてみて履き心地の良さを実感し、購入するという流れが多いですね。品川駅構内で実施した際は羽田空港を目的とするお客さまが多くおり、旅行時に履く靴として購入された方が目立ちました」
駅ナカでファッションアイテムのポップアップストアを開催するのは珍しく、かつ開催時期は夏場の暑いタイミングだった。非常に暑い駅ナカの環境で立ち止まって試し履きしてもらえるのかという懸念はあったが、結果的に想定以上の販売数につながったそうだ。
ニットシューズを販売する難しさとして、履いてもらわないと良さが伝わりづらい点がある。そこで、「軽さ」が伝わりやすいビジュアルを採用したり、言葉の表現を工夫したり、試し履きできる場所を増やしたりして、認知と売り上げを拡大してきたという。
山本氏いわく、今年に入り他社からもニットシューズが続々発売されている流れがあるという。ステッピがニットシューズ専門ブランドとして地位を確立できるか否かは、今後の商品展開がカギになりそうだ。
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