東海道新幹線60周年の節目に、さらなる未来を予想してみた:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
2024年10月1日、東海道新幹線は運行開始から60周年を迎えたが、2034年、10年後の東海道新幹線はどうなっているだろうか。リニア中央新幹線が開業しているとして、さらなる未来を予想してみたい。のぞみ12本ダイヤ、新駅構想、「N700S」の後継車両、自動運転について、考えてみた。
リニア中央新幹線が開業しているとする
東海道新幹線は、リニア中央新幹線の開通によって大きな変化が訪れるはずだ。当初の開業予定は2027年だった。しかし、ご存じのように静岡工区問題があった。静岡工区の工期は約10年と見積もられているけれども、静岡県がいまだに着工を認めていない。
しかし、少しずつ動き出している。事前調査すら認めなかった前静岡県知事に替わり、5月に就任した鈴木康友知事は、地質を調べる「ボーリング調査」を認め、10月5日には山梨工区を見学して、湧水量の少なさやJR東海の調査管理を評価している。
少しさかのぼって、8月には「リニア中央新幹線建設促進静岡県経済団体協議会」が、全15商工会議所と県商工会議所連合会、県商工会連合会、県中小企業団体中央会、県経営者協会の計19団体により発足。そして9月には、沿線各県の経済団体が加盟する「リニア中央新幹線建設促進経済団体連合会」に参加した。
9月26日には県道南アルプス公園線のトンネルが着工した。このトンネルは静岡工区への工事車両の往来と地域振興を兼ねており、JR東海と静岡市がトンネルと周辺道路の整備を分担している。10月7日には国の有識者会議の委員が島田市を訪れ、大井川の利水にかかわる10市町のトップと意見交換を実施した。ここに静岡市長も初めて参加した。
静岡工区着工の外堀は埋まりつつあり、今年度に着工できれば工期10年の2034年度内に竣工となる。つまり、2034年10月は、リニア中央新幹線の開業に間に合うか否かという微妙な時期といえる。ここでは期待をこめて、リニア中央新幹線開業後の東海道新幹線を展望したい。
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