東海道新幹線60周年の節目に、さらなる未来を予想してみた:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
2024年10月1日、東海道新幹線は運行開始から60周年を迎えたが、2034年、10年後の東海道新幹線はどうなっているだろうか。リニア中央新幹線が開業しているとして、さらなる未来を予想してみたい。のぞみ12本ダイヤ、新駅構想、「N700S」の後継車両、自動運転について、考えてみた。
新型車両「N700S」の後継車は出るか
東海道新幹線の車両の寿命は13年程度だ。最新型のN700Sの営業開始は2020年だから、最初につくられた車両も2033年までは走るだろう。N700Sは現在も生産されていて、2026〜28年度には17編成がつくられる。少なくともその13年後、2041年まではN700Sが走る。こうして少しずつ先代のN700系、N700Aと交代していくわけだ。
逆に、2034年度からは次の世代の車両が走り出す。その2年前、2032年には量産確認試験車として試作車両がデビューするだろう。形式名はN700Sの次だから、N700Tか。それだと台湾新幹線の700Tに似てしまう。N700xとでもしておこうか。高度な技術を採用し、新たなデザインでフルモデルチェンジすれば、700以外の数字が使われるかもしれないけれど。ともかく、70周年出発式のテープカットは次世代車両になるはずだ。
同じN700Sでも少しずつ変化している。東海道新幹線は1992年に営業開始した300系から、ずっと定員1323人、うちグリーン車200人を維持してきた。JR西日本から乗り入れた500系を除けば、座席配置も一緒だ。こうして、500系以外のどの形式も全ての列車に充当できるようにしていた。N700Sもそうだった。サービスは普通車とグリーン車の2クラスだ。
しかし、2021年10月からビジネス環境を整えた「S Work車両」を「のぞみ」で運用開始、ノートPCやオンライン会議を気兼ねなく利用できる車両として設定した。N700Sを使用した列車では小型マウスやUSB充電器を貸し出すサービスも始めた。2023年10月には「ひかり」「こだま」も設定した。また、3人掛け中央B席に仕切りを設置し、A席とC席を広く使える「S work Pシート」を設けた。かつて禁煙室だったところを改造し、有料貸し出し会議室「ビジネスブース」とした。
2026年度から2028年度までに製造されるN700Sは、1編成当たり2つの個室も用意される。既存のN700Sも改造して設置されるという。2階建て新幹線100系が提供していた個室サービスが復活する。700系以降、普通車とグリーン車だけだった東海道新幹線は、「S Work車両」や「個室」などの新サービスが加わる。
新型車両の仮称「N700x」は、「N700S」での実験を踏まえて個室を増やすかもしれない。またリニア中央新幹線が開通すれば、乗客も少し減るだろう。そのぶん、ゆとりのある座席のサービスが増えるのではないか。長らく続いた定員1323人を崩しても上級座席を増やせるか。
ちなみに、東武鉄道「スペーシアX」の浅草〜日光間は約1時間50分。この所要時間で、コックピットラウンジ、定員7名のコックピットスイート(個室)、定員4名のコンパートメント、定員2名のボックスシート、プレミアムスイート、スタンダードシートを展開する。
「のぞみ」は東京〜名古屋間を1時間50分、東京〜大阪間を2時間40分で走る。所要時間でスペーシアXとほぼ同じ。新たな付加価値サービスがあってもいい。「N700x」に期待しよう。
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