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赤字転落のヴィレッジヴァンガード 苦境の原因は「サブカル不調」「人材不足」だけとは言い切れないワケ:小売・流通アナリストの視点(2/5 ページ)
ヴィレヴァンが2024年5月期決算で赤字転落を発表すると、「ヴィレヴァン経営の失敗?」といった記事が散見されるようになった。「独自性が失われた」「店づくりができる人材が減ってしまった」といった論調が中心だが、果たして問題はそれだけなのだろうか?
大丈夫なのか?
こう聞くと「大丈夫なのか?」と思うかもしれないが、会社の資金や自己資本は潤沢であり、改善策を実施する時間的余裕は十分ある。2024年に入って売り上げも回復に転じており、今期の黒字回復(2025年5月期の業績予想は売上高272億円、経常利益2億400万円)は実現する可能性が高い(図表3)。
ヴィレヴァンが急拡大した後に急失速したことについて、さまざまな分析がされている。中でも「SNSの影響力がマスメディアを上回るようになり、サブカルという概念自体が曖昧になるにつれて、ヴィレヴァンの対象市場が縮小し始めた」「大半の出店場所がショッピングモールになったことで、ヴィレヴァン独自のとがりや毒気が抜けてしまった」といった指摘が散見された。
「急拡大に伴いヴィレヴァンの異空間を作り出せる人材が希薄化してしまった」という意見も多く、その結果、ヴィレヴァン独自の世界観が失われたという評価にもつながっているようだ。おそらく、これらの意見は全て当たっていて、時間の経過とともに変化した環境と、上場して市場に成長をコミットするために起きた変質とが相まって、顧客とのギャップが大きくなったのだろう。
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