赤字転落のヴィレッジヴァンガード 苦境の原因は「サブカル不調」「人材不足」だけとは言い切れないワケ:小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)
ヴィレヴァンが2024年5月期決算で赤字転落を発表すると、「ヴィレヴァン経営の失敗?」といった記事が散見されるようになった。「独自性が失われた」「店づくりができる人材が減ってしまった」といった論調が中心だが、果たして問題はそれだけなのだろうか?
ヴィレヴァンがすべき店舗網の再構築
人材に関して、かつて運営会社にインタビューしたことがある。ヴィレヴァンの“異空間店舗”は、店長やスタッフの運営におおむね任されている。スタッフは店に来ていたお客がアルバイトになり、バイト店長になり、そして正社員店長になる、という過程を経て、ヴィレヴァンへの適性を会社と社員が互いに判断する。こうして育成された人材は、いわば一人ひとりが店舗コンセプトなのだ。彼ら・彼女らを転勤させることが店舗のリニューアルにつながり、店舗が陳腐化することを回避できる、というロジックがあった。
この考え方は納得できる部分もあるのだが、年齢を重ねていく社員個人のライフステージとは相成れない点がある。また、事業の成長が止まってしまえば、社員へのインセンティブ提供も難しくなる。店舗の減少はポストの減少を、収益の低迷は待遇改善の期待が薄くなることを意味する。遠隔地への転勤が続くのであれば、別の生き方を考えるのが普通だろう。人材への依存度が高いビジネスモデルの会社でありながら、個々の社員の人生に対する配慮は足りなかったと言わざる得ない。
こうした状況を踏まえると、緩やかな縮小傾向が今後も長く続くことは、異空間を生み出せる人材に依存するヴィレヴァンの運営を揺るがしかねない。かつてはヴィレヴァンでバイトからキャリアを積み、いつかは自分の店を持ちたいという志向のスタッフも多かったと聞く。今期は足元の売り上げが回復しているため、経営計画は達成されるだろうが、スタッフの新たなキャリアアップの道筋を提示できなければ、閉塞感を打破することは難しいだろう。
通常、チェーン店は店舗の賃貸期限や収益状況に合わせた店舗計画を作るものだ。そこで少し極端な提案ではあるが、ヴィレヴァンは「店舗ありき」の人員配置ではなく、「本当にヴィレバンらしい店舗」をつくれる店長・スタッフに合わせた、店舗網の統廃合を進めるべきではないだろうか。世界観を共有するスタッフを研修や教育では養成できないことは、店舗数を急増させた時期に会社として十分学んでいるはずだ。
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