AIでガクチカ作成も──就活生のウソと翻弄される採用担当、イタチごっこを終わらせるには?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
就職活動の際、多くの学生がよく見られよう話を盛り、中にはAIで回答を作る学生もいます。一方、企業は何とか学生の人柄を見極めようと必死ですが、就活生も対策を講じるためイタチごっこにしかなりません。では、どうしたらいいのでしょうか。採用活動で本当に大切な視点とは──?
就職活動に関して、思わず失笑してしまう調査結果が公表されました。調査対象は2025年卒業予定の大学生です。
タイトルは「新卒採用における学生の脚色傾向調査」。私はこのタイトルを見て、うっかり失笑してしまったのです。失笑……とは申し訳ないですが、やはり面白い。
なにせ、今回のようなアンケート調査も含め、社会調査の多くは「最近の〇〇って、問題だよね」といった問題意識から行われるものです。
例えば「あなたはストレスを感じていますか?」「あなたは上司部下間のコミュニケーションに課題を感じてますか?」などが頻繁に調査されるようになったのは、ストレスという言葉が一般化し、多くの企業でコミュニケーション問題が意識され始めた2000年以降です。
また、近年頻繁に行われている「孤独」に関する調査も、2000年以降、ライフスタイルの変化や高齢化などの影響で先進国で関心が高まり、2005年のOECD(経済協力開発機構)報告書に、「孤独」に関する調査の結果が盛り込まれたことで、世界的に広まりました。
むろん学術的な量的調査の場合は、研究者が「こういう問題が起きている可能性があるのでは?」と表面化してない事象に切り込むケースはあります。しかし、その場合も多くはフォーカスグループインタビューを行い、手応えを得て本調査に乗り出します。
ですから、今回の「新卒採用における学生の脚色傾向調査」は多くの人事担当者が「最近の学生って、採用面談の内容を盛ってない?」と感じ、「学生の人柄や能力が知りたくてガクチカ(学生時代に力をいれたこと)を聞いているのに、盛られたら意味なくない?」という問題意識が会社側にあることを意味していると言えるでしょう。
「回答をAIで作った」学生も──つい盛ってしまう就活生の心理
実際、周囲を含めどの程度の学生が脚色していると思うかという質問に対し、約半数にあたる48%の学生が「8割以上の学生が脚色している」と答えていました(プレスリリース)。
脚色の内容は、サークルの規模やイベントの成果を、少々大げさに表現したり、実際には他者の成果だったことを、まるで自分の功績のように語ったりするケースがほとんどです。ゼロからでっち上げた人の報告はありませんでした(仮にそういう人がいても、正直に答えるとは思えませんが……)。
一方で、脚色を生成AIに委ねる学生もいるとか。自分で盛るより、AIに盛ってもらった方がうまくいくと踏んだということなのでしょう。
いずれせよ、学生は「何がなんでも内定」をゲットしたいのですから、よりよく自分を見せたい! と思って当然です。逆に人事部の人には「あなたは自分の手柄をちょっと盛って上司に伝えたことは、全くないのですか?」とお伺いしたいです。自分をちょっとでもよく見せたい、ちょっとでも認めてほしい、という欲望は人間の本性です。
最初から嘘をつこうとか、大袈裟に言おうとは考えていたわけではなく、面接官と話しているうちに、つい盛ってしまった、という人も多いのではないでしょうか。
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