「省人化」の先を見据える オルビス流、物流DXの進め方(1/2 ページ)
ECを主軸とする化粧品メーカーのオルビスが、物流拠点の省人化と生産性向上に力を入れている。「単なる省人化だけが目的ではない」と担当者は話す。オルビスはどんな狙いのもと、物流DXを進めているのか。
ECを主軸とする化粧品メーカーのオルビス(東京都品川区)が、物流拠点の省人化と生産性向上に力を入れている。
通販用出荷ラインでは、小型ロボットが商品を載せ、床を自動的に動き回り、指定された場所まで搬送する。近年では、新たにAIで自律走行するロボットを導入し、商品のピッキング業務にあたる作業員の負荷を減らしている。
「単なる省人化だけが目的ではない」と担当者は話す。オルビスはどんな狙いのもと、物流DXを進めているのか。
小型ロボット導入で人員を27%削減
埼玉県加須市にあるオルビスの物流拠点。物流会社の流通サービス(埼玉県草加市)が運営する騎西物流センター内に開設し、再編ののち、「オルビス東日本流通センター」として2012年に稼働をスタートした。同社の通販向け出荷作業の主要拠点となっている。現在、約1000SKUの商品を取り扱い、1日あたりの出荷件数は多い日で1万件を超えるという。
オルビスが物流拠点のDXを本格化するきっかけとなったのは、2017年ごろから問題が表面化した「宅配クライシス」だ。ECの規模が拡大し続けることで、宅配ドライバーが不足するなどし、宅配体制が維持できなくなる問題だ。
現行の出荷ラインのままでは、倉庫内でも同じく人手不足などに陥り、事業が進まなくなる可能性があると考えたオルビスは、同じポーラ・オルビスグループのディセンシア(東京都品川区)、流通サービス、それに、オルビスの物流ソリューションを手掛ける椿本チエイン(大阪市)を加えた4社で、物流拠点の改革に向けたプロジェクトを立ち上げた。
このプロジェクトを経て、2020年8月から通販用出荷ラインに導入されたのが、商品の集荷から仕分け、検査・梱包作業場所まで自動搬送する小型AGV(無人搬送ロボット)だ。
合計330台のAGVが、制御システムから指示を受け、指定された場所までぶつかることなく、最適なルートで走行する。作業者を「歩かせない」「待たせない」「持たせない」「考えさせない」――といった「4つの“ない”」を基本コンセプトにした。
導入の結果、1時間あたりの最大出荷件数は従来の1800件から2400件へと1.3倍に増えたほか、作業人員は89人から65人へと27%削減。1件当たりの出荷作業コストも18%減少した。
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