鉄道事業の分社化は小林一三イズムの終焉か 南海電鉄の新たな一手:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
南海電鉄が10月30日、鉄道事業の分社化を発表した。2026年4月に100%子会社の鉄道事業会社が発足する。東急電鉄も2019年に鉄道事業を分社化しているが、それ以前に西武鉄道、阪急電鉄、阪神電鉄も鉄道事業を子会社化している。鉄道会社が鉄道事業を分社化する理由を考えてみたい。
なぜ分社化するのか
鉄道会社が本業であるはずの鉄道事業を子会社化する。まるで本業を切り離すように見えてしまう。しかし、それは「鉄道」という誰もが利用する分かりやすい産業だから特別に見えるだけで、企業全体から見れば本業の分社化は珍しくない。
豊田自動織機は繊維工業として創業したけれども、主力となった自動車部門を分社化してトヨタ自動車を設立した。日立製作所は久原鉱業所の機械修理部門が独立したもので、のちに創業事業の産業機器部門を日立産機システムとして分社化した。NECは電話交換機や通信機で創業し、そこに使う半導体事業で発展したけれども、後に半導体事業は分社化。かつて日本でトップシェアだったPC事業も分社化した。
分社化の利点には「節税」「リスク分散」「資金調達」「意思決定の迅速化」などがある。会社組織が大きくなると、現場が求める事項に対してハンコを押す責任の階層が増える。そのなかには専門外の人がいて、事情も分からず反対したり、決裁を後回しにしたりする。こうした「規模の不経済」を解消して、経営をコンパクトにすれば経営判断が速くなる。資金調達についても目的が明確化するため実行しやすい。
欠点は、管理部門の維持費が増えること。社屋を外に出せば費用が増えるし、本社に頼っていた管理部門も新たに設ける必要がある。人事制度が変わって、本社より待遇が悪くなる恐れもある。ただし業績が明確になるため、好業績であれば待遇が改善される。南海電鉄の分社化は、社員が全て本社からの出向になるとのことだから、待遇に差が出ることはなさそうだ。
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