「出世するなら必ず管理職」からの脱却は、何を生む? 三井住友銀行「年功序列の廃止」の真意【後編】(5/5 ページ)
三井住友銀行が2026年1月をめどに、人事制度を抜本的に変更する方針を示した。その中でも「年功序列の廃止」が注目されている。新制度を受け止めることになる社員とのコミュニケーションはどのように計画しているのか。また、制度が変わることによって社員のキャリアプランにどのような影響があるのか。その詳細に迫る。
制度の運用まで、残された2つの課題は……
河合: 制度の施行目安である2026年までに残された時間で、実行に移すために最も課題だと思っていることを教えてください。
北山: はい。大きく分けて2つあります。
一つは、マネジメントです。マネジメントのみなさんに「評価のリテラシー」を高めてもらうには、新制度の理解を高めるしかありません。このマネジメントに向けた取り組みは、制度改訂前に社内からかなり言われていることなので、そこをきちんと丁寧にやっていきます。
河合: 具体的には?
北山: 新しい制度の行動評価の中でも、各職場での行動発揮をよく見てもらいます。一つは新制度の内容をマネージャーの皆さんにより分厚く説明して、しっかりと理解を深めてもらう。あとはいろんな研修コンテンツの提供もそうですけども、やはりD&Iという文脈も含めて、特にイクイティの部分は、1人1人に即した評価という考え方になるので、相当な評価リテラシーを高めていってもらわなくてはなりません。研修場が人事部門にありますので、研修機会はかなり重層的に設けます。
ただオーバーサプリメントになってもよくないので、「何の意味があるのか」をきちんと伝えた上で受けていただきます。自ら渇望して入ってもらえば一番いいので、そういうメッセージを出していくのが大事だと考えています。
河合: もう一つは?
北山: 従業員の皆さんへのコミュニケーションです。私が今申し上げたようなことを、これまでのストーリーと合わせて経営トップから人事、現場の管理職の皆さんから社員に伝えていってもらうようにしないといけません。「業績堅調なのに、何でわざわざ制度改定なんかやるんだろう」と不思議に思っている人や、不安に感じる人もいます。そこをしっかりと伝えていくのを、この期間で相当力を入れてやらないとなりません。
河合: 新制度をマネジメント、社員全員に理解して、共感してもらうということですね。新制度を実現するために、みんなに伝えたい合言葉みたいなものがありますか。会社としてではなく、北山さんの言葉で。みんなを引っ張っていく上で、みんなが「そういうことか!」って思うような合言葉。
北山: なるほど……、なんでしょうね。やっぱり自分自身がわくわくする職場であってほしい。さらにちょっと味付けすると、ヒリヒリする思いっていうのも結構大事かなと思ってまして、やっぱり「わくわくヒリヒリするような職場」ですかね。
河合: いいですね! わくわくヒリヒリ。ずきずきじゃなくてね。
北山: はい、何となく、やっぱりヒリヒリした感じは味わってほしいです。
河合: ヒリヒリし続けてくださいね。陰ながら応援しています。
執筆・インタビュー:河合薫
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)がある。
2024年1月11日、新刊『働かないニッポン』発売。
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