「30代がいない!」危機──選ばれる企業と捨てられる企業、明暗分けるポイントは:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
次世代を担うはずの30代社員が「足りない!」と嘆く企業が増えています。若手に選ばれず、老いていく──そんな危機を抱える企業はどうしたらいいのでしょうか。今の30代が直面する「ストレスと誘惑」に対し、企業ができることは?
30代がいない──。そう嘆く声を頻繁に聞くようになりました。
「次のリーダーを選ぶにも会社に30代があまりおらず、若手となると20代になってしまう。結局、自分が続けるしかない。一体いつまでやればいいのか」(40代男性、大手企業)
「コロナ禍にごっそり30代が辞めてしまった。社長は『雇用は絶対に守る』と宣言したけど給料は下がったからね。最近の若者は転職に抵抗がないから」(50代女性、課長職)
「海外でトラブルがあって、深夜に社員を緊急召集した。明け方バトンタッチするのに出社して、メンバーを見て驚いた。40代後半の課長と20代の若手だけ。なんとか最悪の事態は回避できたのは奇跡だと思った」(50代男性、部長職)
「技術移転したいけどリーダー不在だからどうにもならない。いつまで働けばいいのか? もうヘトヘトです」(50代男性、課長職)
などなど……。このように、20代の若手や40代以上の社員はいるものの、30代が不足している、または辞めてしまったという声を聞くことがにわかに増えています。そして「この先の会社をどうする?!」という状況に直面し、40代以上の社員が疲れ果てているのです。
日経ビジネスが電子版の読者を対象に実施したアンケート調査でも、約7割が「会社で30代が足りない」と回答。記事によると、30代の労働力人口は2003年の1434万人から、2023年には1193万人へと減少。30代が全体に占める割合も2003年の21.5%から、2023年には17.2%と2割を切りました。
若手に選ばれず、老いていく企業──何ができる?
労働人口そのものが減る一方で、中高年〜シニア社員の割合が増え、若い力への依存度は高まる一方です。特に、働き盛りの30代には頑張ってほしいのに転職する人も増えてきました。
むろん20代の定着・育成への悩みも尽きません。どこの企業も、賃金を上げ、労働時間を削減し、家庭やプライベートを優先できる「働きやすい職場づくり」に精を出してきたのに、いっこうに若い社員が集まらない。たとえ新卒時に「わが社」を選んでくれても、数年でさっさと辞めてしまうのです。
厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」でも就職後3年以内の離職率は、新規大学卒就職者が34.9%で前年度より2.6ポイント高く、新規高卒就職者も38.4%で前年を1.4ポイント上回りました。10人採用していれば3人くらい辞めても何とかなるだろうけれど、元々3人だと残るのは2人きり。確率的には「1人しか残らない」状況にもなり得るわけです。
そのうえ20代のロールモデルになる30代まで「いない、辞める、いても管理職になりたがらない」となれば、会社は老いていくばかりです。
そこで今回は「30代が辞めたくない会社とは?」というテーマであれこれ考えてみます。
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