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新幹線が止まったらどうなる? JR東海の事故対応は「仮復旧」も重視杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)

JR東海が11月7日、東海道新幹線の総合事故対応訓練を報道公開した。会場は静岡県三島市の「三島車両所」で筆者にとっては初めての見学だったが、「いままでの事故復旧とは考え方が変わってきている」と感じた。今回は訓練の模様と、私が感じた復旧に対する変化をお伝えしたい。

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架線断線発生時の復旧訓練(今年初)

 飛来物が接触するなどの原因で架線が切れた。この切れた部分を仮架線で接続して応急的に復旧する。

 架線は新幹線車両に電力を供給する経路だ。切れると送電されないため列車が走行できない。また高電圧のため、切れて下がった電線によって感電、発火の恐れもある。架線が切れる主な原因は架線の腐食、たるみによるパンタグラフとの接触などがある。架線の腐食は飛来物の接触で急速に進む場合もあるし、たるみは気温などに応じて張力を維持する装置の故障で起きる。2022年12月18日に豊橋〜三河安城間で起きた架線切断もたるみによるものだった。


切れた架線がぶら下がっている。作業開始まではロープでレールに固定しておく(筆者撮影)

 架線は張力を維持するために一定の区間で区切られ、各区間は1本の線でつくられている。架線が切れた場合は、その区間の架線を丸ごと交換する必要があり、復旧に時間がかかる。そこで、取りあえず短い架線を継ぎ足して仮復旧する。

 訓練では数人1チームの復旧部隊が現地を訪れ、司令部と連絡を取りつつ作業していく。この区間を停電し、切れた架線の端同士をひもで結んで地上から引っ張って持ち上げる。その後、架線にはしごを掛けて上り、仮架線で切れた端同士を結んでいく。もちろん架線に命綱をつなぎ、位置を変えるたびに命綱を付け替える。まるでとび職が高層ビルで作業をしているようだった。仮復旧までの作業時間は約50分だった。


断線した架線の仮復旧作業。まるでとび職。まさに職人技(筆者撮影)

作業終了確認。上を向いたワイヤーが2本あるところが接続ポイント。パンタグラフが引っかからないように、下部はなめらかにつながっている(筆者撮影)

 架線作業といえば、JR西日本が導入したロボット型作業車「零式人機」が思い浮かぶ。危険な作業であるし、ロボットに置き換えたいところだけれど、実際に作業を見ると、架線の結びなど手先を使った作業が多く、ロボットのアームでは難しいと思った。職人技ならではのスピードだったと思う。

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