学習塾や脱毛サロンの「いきなり倒産」、なぜ起きる? 消費者が「貸し手」になる共通点(4/4 ページ)
企業の「いきなり倒産」による、突然のサービス停止。こうした倒産で被害にあわないようにするための未然の防止策はあるのか?
「いきなり倒産」にあわないために大切な思考法
ただ、もちろん全ての前払い方式が悪いわけではない。実績ある大手企業の場合、広告費や人材育成に潤沢な資金を回すことで、より充実したサービスを提供できることがある。そのため、割引額が大きいことや広告に有名人が使われているという点だけを見るのではなく、その資金がどのように使われ、回収される見込みかを少しでも意識することが重要である。
自分が知らず知らずのうちに「貸し手」になっている可能性があることを自覚できれば、企業の財務状況や倒産リスク、そして契約内容のチェックを、より慎重に行うことができるはずだ。誠実なクリニックや塾であれば、財務状況を説明する資料を提示してもらえるかもしれない。提示してもらえないのであれば、契約しなければよい話だ。
こうした視点を持つことで、予期せぬ「いきなり倒産」のニュースをうけて後悔するリスクを大幅に減らせるだろう。
いきなり倒産の事例だけでなく、あらゆる詐欺にだまされない思考法の一つとして、「自分が得られるリターンと、銀行の貸出金利を比較してみる」ことも有効だ。もし銀行借入の金利が年数%程度であり、企業がそれよりもはるかに高い割引率を提示している場合、なぜその企業は銀行から低金利でお金を借りないのかを考えてみるとよいだろう。また、割引が魅力的に映る前払いコースや、破格の利回りを示す契約に踏み切る前に、「自分はこの会社にお金を貸そうとしている」「そんなにリターンが良いならなぜ自分でやらないのか」といった視点を持ち、慎重に検討することが必要だ。その上で、もし契約する場合は、万が一倒産しても致命的な痛手にならない範囲にとどめるのも一つの選択肢だ。
「サービスを買っているはずが、事業者に資金を提供していただけだった」と気づくのが、破綻のニュースを聞いてからでは遅すぎる。学習塾にしろ、脱毛サロンにしろ、前払いの裏にある企業の信用リスクを見極める姿勢を忘れないのが、賢い利用者といえるだろう。
逆に、企業側に求められる姿勢は?
逆に企業側は、前払いビジネスモデルを展開する以上、広告や店舗拡大のみに資金を集中させるのではなく、顧客が支払った資金を安全に管理し、サービス継続の原資として確保することを第一に考える必要がある。預金保険機構のように、破綻時に前払い代金をペイオフするような団体を、業界として設立するといった対策も有効だろう。
また、学習塾や脱毛サロンのような専門人材の育成や雇用が不可欠な業態では、人件費の高騰や人材不足は経営に大きな影響を与える。焦って新規拠点を増やしても、講師や施術スタッフをそろえられなければサービスの質が低下し、かえってブランドイメージを損ねてしまう。前払いサービスを導入するにあたっては、その資金が未来のサービス提供費用であることを認識するとともに、物価上昇や人手不足によるコスト上昇も織り込んだ価格にする必要がある。
急激な成長を求めるあまり利用者の信頼を裏切れば、破綻と同時に長期的な信用も失い、事業再生が極めて困難になるということを忘れてはならない。
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