生成AIで懸念視されるCO2排出増 注目の新評価軸「スコープ4」とは?:AI×社会の交差点(2/3 ページ)
「将来削減され得る」CO2排出量に着目する動きが広がっている。
排出されたCO2を、いかに減らすかに重点が置かれている現在
現在は、企業活動によって発生したCO2排出量を測り、それをいかに減らしていくかというアプローチが主流だ。しかし、それでは事業の規模が拡大した時にCO2排出量は増えてしまうことになる。CO2排出量が増加すれば、企業の理念や事業戦略に対する投資家からの評価に悪影響を与えかねない。
電気自動車(EV)を製造・販売する企業を例に考えてみよう。EVの販売が増え、生産が増えたとする。原材料の調達先などで製造時に化石燃料が使用される場合、CO2排出量が増加する。しかし、ユーザーがガソリン車の代わりにEVを利用することで、CO2排出が減り、将来的に社会全体のCO2排出量削減に寄与する可能性が高い。
しかし、温暖化ガス(GHG)排出量を算定するための国際的な基準である「GHGプロトコル」で報告が求められているのは、現在のところ、“実際に”排出されるGHGの量だけだ。つまり、“将来”ユーザーがガソリン車を利用する代わりにEVを利用することで生まれるCO2排出の削減効果は含まれない。この企業のサステナビリティレポートではCO2排出量が増加したことを記載することになり、場合によっては事業が環境負荷の増大につながっているとみなされ、投資家をはじめとしたステークホルダーからの評価が下がってしまう可能性もある。
そのため、現在の手法では環境負荷低減に向けた企業の“貢献”を十分に評価できない場合がある。社会の脱炭素化に寄与する事業を展開しているのに、CO2排出量自体は増加しているように見えてしまい、企業のサステナビリティへの姿勢が問われかねないというジレンマが発生する。
生成AIに関しても同様のことが起きている。生成AIに起因するCO2排出量の増加を抑えるために、メガクラウドベンダーを含むIT事業者は、再生可能エネルギーの利用やハードウェアの冷却効率の向上などに取り組んでいる。
こうした努力は、持続可能な社会の実現に向けて企業が初めに行うべきことである。しかし、交通量を基に信号のスケジュールを調整して都市のCO2排出量削減を目指す交通最適化システムなど、AIを用いたアプリケーション自体がCO2削減の解決策ともなり得る。
CO2排出量を測り、それをいかに減らすかという取り組みだけを見る現在の評価基準では、不足感があることは確かだ。
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