割安感と資産価値
投資家はなぜ炎上を受けてフジ・メディアHDの株を買っているのだろうか。その背景を理解するには、同社のPBR(株価純資産倍率)が「0.47倍」(記事執筆時点)であることを理解する必要がある。
PBRとは、株価を1株当たり純資産(BPS)で割った指標である。この指標が1倍を下回ることは、その企業の解散価値(清算価値)以下で評価されていることを意味する。
極端な例を挙げれば、「1億円の預金がある会社が4700万円で売りに出ている」ようなものだ。
もしフジ・メディアHDが本日、直ちに会社を清算すれば、投資家は投資額の2倍以上の精算を得られるということになる。これが足元の株価の「割安感」を際立たせ、投資家の買いを誘発する。
だが、そのような低いPBRで放置されるにも理由がある。
一般に、自己資本をうまく活用できない会社は低いPBRとなる。例えば、いくら預金が多くても、その預金を使って収益を生み出す力がなければ、従業員などの人件費やその他の固定費で預金が年々減り、預金が減っているのに、年々PBRが上がってしまう。
近いうちに会社を清算するならよいが、そうでない場合は清算された際に受けられる分配の期待値が下がるため、PBRが1倍を下回っても買い手がつかないことが起こるのだ。日本では労働基準法による解雇規制が強いため、欧米に比べてもPBR1倍割れ企業が多いという特徴もある。
日本の株式市場では、プロの投資家や何兆円もの資金を運用するファンドが持てる力を尽くして銘柄のリサーチを行っている。そんなプロが「PBR1倍割れ」銘柄に食いつかないということは、それなりのリスクがあると判断されたからにほかならないのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なぜフジテレビは失敗し、アイリスオーヤマは成功したのか 危機対応で見えた「会社の本性」
吉沢さんのCM継続を発表したアイリスオーヤマに、SNSで称賛の声が上がっている。危機管理対応としては契約解除が「正解」とされることが多いが、なぜ同社はこのような“神対応”ができたのか。その理由は……。
フジ社長交代、新社長の経歴は? 『ドラゴンボール』『ちびまる子ちゃん』など手掛ける
フジ・メディア・ホールディングス(FMH)は1月27日、フジテレビジョンの港浩一社長、嘉納修治会長の辞任を発表した。清水賢治専務が社長に昇格する。
「パーカーおじさん」はなぜ生まれた? ちょいワルおやじがビジネスシーンに与えた、無視できない影響
年末に「パーカーおじさん」が議論を呼んだ。ビジネスシーンでパーカーを着用することの是非を巡ってSNSで意見が飛び交ったが、そもそもなぜパーカーおじさんは生まれたのか。歴史や背景を探る。
“インバウン丼”と呼ばないで――1杯1万円超の海鮮丼が話題の豊洲「千客万来」、運営企業が漏らした本音
メディアによる切り取った報道に、現地は困惑しているようだ。
インバウンド殺到の渋谷ドンキ 「月に1億円」売れるお菓子とは?
東京都で最も訪日客が訪れる街、渋谷のドン・キホーテでは何が一番人気なのか? インバウンド需要の最前線を取材した。