高速PDCAで荷物返却も「爆速」 スカイマークの顧客満足度がANA、JALよりも高い納得の理由(2/3 ページ)
ANAとJALに続き国内航空会社で3位のスカイマークだが、顧客満足度ランキングでは2社を上回り、1位を獲得している。特に利用者から評判なのが、受託手荷物の返却スピードだ。SNSでも「着いた瞬間に荷物を回収できた」「人より先に荷物が出てきている」といった声が多い。
「いつまでもしあわせに」 現場スタッフのアートがSNSで話題
もちろんスカイマークの顧客満足度が高い理由は、これだけではない。国土交通省のデータによると、2023年度の定時運航率は91.3%で、ANAとJALを上回り、国内航空会社として2位(※)。欠航率でも低い水準を維持している。
※:客席数が100または最大離陸重量が5万kgを超える航空機を使用して行う航空運送事業を経営する事業者を対象にした調査内で2位。
その他、戸田氏はスカイマークの強みを「現場力」と表現し、顧客満足に関するさまざまな取り組みを挙げる。搭乗客と直接コミュニケーションする客室乗務員であれば「セカンドドリンク」のサービスや、子どもにお菓子や塗り絵などをプレゼントするサービスが代表例だ。
同社では客室乗務員だけでなく、飛行機の整備クルーや誘導員たちも、顧客体験の一翼を担っている認識を持てているといい、駐機場に係員が水で絵を描く「水アート」もスカイマークらしい取り組みだ。
中でも、バラの絵に「乗ってくれてありがとう いつまでもしあわせに」というメッセージを添えて搭乗客のプロポーズを祝福した水アートは、数年前にSNSで大きな話題となった。井上弥緑氏(CS推進室 副室長)は次のように振り返る。
「きっかけとなったのは、お客さまが花束を受託手荷物としてお預けされたことでした。積み込みを担当する係員が貨物室へと運ぶ際に『これは何だろう』と気になって、荷物をお預かりする係員に聞いたところ、プロポーズで使われたものだという情報が共有され、何かできないかと考えて水アートでお祝いしました。このように、業務の垣根を超えて情報を共有しながら、お客さまのために何ができるかを考えられるのが、われわれの強みです」
アンケートは毎日チェック、課題があればその日につぶす「高速PDCA」
スカイマークでは、顧客満足度に関しては大まかな運用を定めつつも、細かな運用は現場の裁量にゆだねており、それぞれが工夫して業務改善に取り組んでいる。
現場力が発揮されている例として、戸田氏は新千歳空港を挙げる。同空港は受託手荷物のスピードに対して、顧客の評価が非常に高い。
大まかな荷物の積み下ろしの運用はどこの空港でも共通しているが、新千歳空港では飛行機から降りた人が受け取りスペースまで、どのくらいの時間で到着するかを計測。これまでの実績で、利用客が来る前に荷物を流せることは分かっていたが「お客さまが来る前からレーンに荷物が流れていると、自分の荷物を探す時間などでかえって手間取ってしまう」(戸田氏)と判断。利用客が来るタイミングで係員が合図を出し、荷物を流し始める運用をしているという。
このような、現場が自ら考えて行動する文化を下支えしているのが「顧客の声」の可視化・データ化による「高速PDCA」だ。
スカイマークでは、搭乗客に全6項目の「搭乗後アンケート」を送付している。アンケート結果はCS室で集計し、毎日の朝会で分析。緊急度の高い課題が見つかれば、即日中に施策を講じる。1日に700件、年間で25万件ほどの回答があるという。
集めたアンケートは、内製したシステムを活用して毎日24時までにデータを集計。Excel上で集計し、レポートにまとめている。さらにフリーコメントは、翌日朝に(1)サービスを褒めるものなのか、(2)苦言を呈するものなのか、(3)提案などの意見なのかを大別し、その上で「機内」に関するものか「空港」に関するものか――といった形で細分化して整理する。
レポートとフリーコメントは、経営陣や支店長も参加し、毎日行う朝会で発表している。レポートには全支店のデイリーや月間、年度の平均スコアがまとまっており、評価の高い順に記載しているという。また、それぞれのデータは全社員が見られるようにしており、こうした環境が現場力の高さにつながっていそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「それ効果あるの?」と言わせない! 三田製麺マーケターの“社内を納得させる”施策効果の可視化術
「SNSのフォロワー数は増えているのに、売り上げへの貢献が見えない」「オンライン施策と店舗集客の関係性が分からない」――。多くの広報・マーケティング担当者が、一度は直撃したことがある課題だろう。そんな中、つけ麺チェーン「三田製麺所」を運営するエムピーキッチンホールディングスは、SNSやWebを活用した認知拡大から、コアファンの育成、そして売り上げ貢献までを可視化する独自のロジックを確立した。
数字に“とらわれる”マーケターの現代病 「普通のことを普通に考える」だけでいい
「顧客中心主義」と「数値主義」どちらを選ぶか──現代のマーケターは今、難しい2択に迫られている。筆者は、現在のマーケターは“数字にとらわれている”人が多いと思うのだ。
生成AIは、1日2500件の対応に追われるJR西「お客様センター」をどう変えた?
R西日本のお客様センターが、生成AI活用を強化している。このお客様センターを運営するJR西日本カスタマーリレーションズはこれまでも、東京大学松尾研究室発のAIベンチャーのELYZAと協業して生成AI起点で業務フローを見直し、オペレーターの業務効率化に取り組んできた。JR西日本のお客様センターでは、生成AI活用によって業務の効率化にとどまらず、VoC活用の可能性も広げているという。
「チューブが使いにくい」「パウチって何?」 エスビー食品、顧客の「声」を生かした商品改善のアイデアとは?
「クレーム対応に追われてしんどい」といったイメージが根強いお客さま相談窓口業務。エスビー食品では相談窓口におけるデータ活用に力を入れている。顧客の「声」を生かした商品改善のアイデアとは?
KDDIの「持続的なCX改善」、どう実現? FAQ刷新で年数万件の電話削減も
KDDIは2017年、点在していたWebサイトを統合し、より良い顧客体験を提供するためにauブランドの総合ポータルサイト「au.com」をスタートした。迅速な改善を継続して続けることで、さまざまなうれしい効果があったという。
「データ重視」でWeb流入3倍に アステラス製薬のMRが挑んだCX改革
優れたCXを実現すれば、顧客満足度を向上させるだけでなく、ブランドの差別化や優位性を確立させ、どんな状況でも「選ばれる」存在へとなることができる。アステラス製薬はコロナ禍でパーソナライズを中心にしたCX改革を進め、それまでバラバラだったデジタルチャネルと営業チャネルの連携を実現。メールからのWebサイト来訪率を約3倍まで伸ばしたほか、営業に渡すホットリードのインサイトの質、数を大きく向上させたという。
大量のデータでSuicaが超進化! 改札で「タッチ不要」が異次元のインパクトをもたらすワケ
ピッ!――駅の改札で、もうこの音を聞くことがなくなるかもしれない。東日本旅客鉄道(以下、JR東)は、Suicaの大幅なアップデートを予定している。このアップデートにより、Suicaをタッチしなくても改札を通り抜けられるようになるという。



