ITmedia デジタル戦略EXPO 2025冬
ビジネスパーソンが“今”知りたいデジタル戦略の最前線を探求します。デジタル経営戦略やAI活用、業務効率化など、多岐にわたるビジネス課題を解決。
パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」(デューダ)。競争が激化する転職市場において、事業をさらに成長させるにはデータ活用が欠かせない。
前編では、doda事業を支えるマーケティング、プロダクト(Web/アプリ)、サービスのデータ活用について、データ基盤の整備に当たったパーソルキャリア カスタマープロダクト本部の小林裕也氏(データビジネス統括部 ビジネスプランニング部)にそのポイントを聞いた。後編では、積極的にデータ活用していく組織・人材をどのように育てていったのか、その取り組みについて語ってもらった。
聞き手はアドビ DXインターナショナルマーケティング本部の小松崎 扶美恵氏(フィールドマーケティングマネージャー)。
定量化データを活用できる基盤作りからスタート
小松崎: 小林さんはもともとパーソルキャリアのデータ活用活性化に向けてジョインされたそうですね。当時、データ活用はどのような状態だったのですか?
小林: ジョインした当時は、BI(Business Intelligence)機能の刷新と合わせて内製のデータウェアハウス(DWH)とCDP(Customer Data Platform)であるデータマート(DM)を再設計しているタイミングでした。マーケティングチームが扱う広告ツールのデータや、オフラインを含めたエージェントサービスのチームが使うデータベースは既にありました。ですが、それ以外のWebサイトやアプリといったプロダクト全般に関するユーザーの行動データが連携されておらず、マーケティング・プロダクト・サービス全体にわたる分析や事業評価ができないという課題がありました。
これに対し、目指していた世界は「ユーザーがどのチャネルからdodaに来訪し、会員登録を行っているか」という集客のプロセスと、「その後どのようなサービスに接触して、どのような求人情報に接触して応募に至ったか」という、選考プロセスまで一気通貫で可視化できる総合的な分析可視化データ設計とその活用です。
その実現に向け、ユーザー行動データの収集・分析ツールとしてAdobe Analyticsを導入。全社データ基盤を活用したDWH/CDPとのデータ連携を通じて、集客から応募、選考プロセスまでの一気通貫した分析が可能な仕組みを整備しました。
そこで人材業界でのデータ分析・データ環境整備構築の経験があり、「スカウトやオファーの分析に携わっていたこと」「Adobe Analyticsの経験があること」という2つの観点でお声がけいただき、入社したという経緯になります。
「データを見る必要性」が全社に広がる
小松崎: 入社以降から現在に至るまで、データ活用組織・人材の育成にどのように携わっていたのかも教えてください。
小林: 入社当初の2018年度は、全社データインフラ組織が運用管理する全社データ基盤へのユーザーの行動データの連携と、その行動データを交えたサイトの評価分析・改善、DWH・DMの再設計をメインに行いました。データ基盤の整備が進み、周辺組織のデータ活用意識が高まり始めたのは2019年以降です。この時期にプロダクト&マーケティング本部内の各チームがDWH/CDPやBIツールを活用し始め、施策の評価や分析が統合的に進められるようになりました。
例えば、それまでは集客側のみの観点であった「会員登録後の継続利用」に対し、集客チャネルごとの特性の違いや、量と質の違いを分析し、継続に至らないユーザーは「なぜ続かないのか」と深堀りすることで、Web/アプリを担当するプロダクトチーム側でも会員の傾向に対する施策を検討する動きが出てきました。それに伴い、新たにdodaの企画チーム側にも「データを見る必要性」の文化が生まれてきました。
2019年からは、データ活用を推進するチームが別途立ち上がり、BIツールでのダッシュボードを起点に各所への展開が始まりました。ここからは、各チームで別々に行っていたモニタリングをDWH/CDP、BIへ集約させていく動きが強まりました。合わせて、ユーザーの行動データなどを織り交ぜた施策評価分析のダッシュボードの開発や、アドホックなパターンテストの分析画面の開発も進みました。
分析範囲の拡大・深化が続くなか、dodaの企画組織とデータ分析やデータマネジメントを行う組織と分析レポーティングの整備が横並びになり、2020年直前には現在の本部組織が目指す機能の素地が固まりだしました。このタイミングで組織を横断したデータ活用文化ができたと考えています。
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