「欲のなさ」にいら立つ上司
『欲のなさ、ですか。もう少し具体的にいうと、どんな感じですか?』
「彼はすぐに仕事を覚えて、安心して任せられるようになったんですけど……そこで止まっちゃってるんですよ」
『止まっちゃってる?』
「はい。言ってみれば、仕事を任せられるような最低限のことを身につけてからは、それ以上に何かができるようになるとか、知識を吸収するといったことがないんです」
『貪欲に追求する姿勢がない?』
「まさにそれです。一人前にできるようになったということで安心してしまって、それ以上に成長していかないんです。……気付いたんですが、私のイライラは期待の裏返しだったみたいです。もっと伸びてもいいと思うのに、今イチ伸びてくれないためにイライラしてしまうんです、きっと」
『それほど彼に期待しているわけですね』
「ええ、彼の能力からしたら、もっと仕事ができるようになっていいと思うんです。もっと知識を仕込めば仕事の仕方をいろいろ工夫することもできるようになるだろうし。貪欲に成長を求める姿勢を身につけてほしいんですけど、どうも欲がないんですよね」
『能力を存分に発揮してほしいのに、本人に欲がないため、成長が止まっちゃってる。そこを何とかできないか、っていうことですね』
「そうなんです。もったいないと思うんです。せっかく力があるのに十分に生かさないのは。そうかといって無理やり課題を与えたりしても、周囲からパワハラみたいに誤解されても困るし……」
『欲がないのを何とかしたいということなら、本人の気持ちを刺激してあげる必要がありそうですね』
「気持ちを刺激する……そうですよね。本人自身の気持ちが変わらないと、いくら私がイライラしても、何も変わらないですね」
ここで動機づけについて簡単に解説し、今後の接し方について話し合った。その概要は、以下のようであった。
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